Black
ヨコって、何となくだけど草食系なイメージだった。悪い意味じゃなくて、紳士的って言うか。安心、とかの前に、セックスなんて言葉、一切頭を過ぎらなかった。
『思てなかったん?』
「...ん、全然」
ちらりとヨコを見て言えば、そっか...な感じで何度か頷いてから俯いて固まった。暫くして顔を上げると、鼻を啜りながら思い出したように私をちらっと見て言った。
『俺...男やしさ、』
「...知ってる」
そう返すとまた流れる沈黙。
...ちょっとは期待してもいいんだろうか。全く期待していなかったけれど、私とシたいってことは少なからず私に好意を抱いてるってことで、もしかしてそれは、恋の可能性なんてこと、ないんだろうか...。
『...家来たい言われたら期待するやん、』
「きたい...?」
『...シャレちゃうで?』
...別にシャレだとか思ってないし!何恥ずかしくなっちゃってんの!
なんで期待するのかって話!それは私と同じ期待なんだろうか。...そうじゃなきゃ困る。だってもう、その言葉に期待し過ぎてしまったから。
『...折角来たんやからええやん、...ヤろうや』
そんなんじゃなくて、ちゃんとした言葉が欲しい。普段紳士的なくせに、そんな安い誘い方して欲しくないのに。
「...嫌」
お願いだから、早く言って。
するだけで終わりなんて、無理だよ。
『......なんでなん?』
項垂れたヨコの顔が少し紅潮している。定まらない視点が宙を泳ぎ、落ち着きなく指が動いている。
「...なんで、シたいの、」
はっとして顔を上げ私を見たヨコの顔がますます赤く染まっていく。そしてまた目を逸らしてごくりと唾を飲んだヨコを息を呑んで見つめていると、一度息を短く吐き出して、覚悟を決めたように私を見た。
『...もう、嫌やねん。友達ごっこ』
End.
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