Red
『ヤらせて』
顔を上げてすぐそこにいるすばるに目をやれば、何故かすばるが気まずそうに私から目を逸らした。
...ヤらせて、?って、言った?
耳を疑ったけど、...言ったよね?
『ヤらせてや』
...うん。やっぱり、言った。
なんで?びっくり。だって私のこと、いつも可愛ないとか言うじゃない。ほんっまブスやなとか、言ってるじゃない。...あ、もしかしてからかってる?私が慌てるの見て笑うんでしょ。
「...やだよ、」
言いながらもう一度目を向ければ、溜息をつきながらすばるが俯く。そしてチラチラと私を見ながら咳払い。
『...なんで?なんで嫌なん?』
「...友達、だし」
その言葉で顔を上げたすばるが、今度は少しムッとしたように鋭い目を私に向けた。
『ええやんけ2回ぐらい』
...2回、くらい...?
「..............。」
『..............。』
すばるを見たまま固まる私を、目を逸らすことなくすばるがじっと真っ直ぐに見ている。自分の言ってることが何も間違ってないみたいに。
「...2回、するの?」
『...1回でもええで!』
...そうじゃないよ。色々おかしいけよ。...と思ってるうちに私ににじり寄って来たすばるが、私の腰に腕を回すからドキリとした。
疑問はいっぱいあるのに、真っ直ぐに射抜くようなその目に流されてしまいそう。だけど、もう若くないしハッキリさせなきゃ。
「...いや、」
『なんでや!1回でもええ言うてるやろ!』
唇を尖らせて抗議するすばるの手は、それでも尚離れることなく腰に回っている。ますます自分に引き寄せるようにぐい、と腰を抱き、すばるが拗ねたように私を見た。
『...ええやろ?』
「...だから、」
またムッと歪んだ眉を見ていたら、急に顔を近付けてくるから思わず肩を押した。同時に急に変わった表情が、あまりにも男で動揺する。
背中に回されたもう片方の腕に締め付けられながら耳元に寄せられた唇。
『...嫌がってられんのも、今のうちやで』
End.
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