Purple
『は、何しに来てん』
「...え?」
突然信ちゃんが私の首に腕を回して引き寄せ至近距離で見つめるから、思わず肩を押した。...そしたら、鼻で笑われた。
『男の家来といてやで?普通そういうことなるやろが』
...正直びっくりしてる。だって信ちゃんは『寄ってったらええやん』と言っていたし、何か起こりそうな雰囲気で誘われたわけではなかったのに。
「...ならないよ、」
言った瞬間にムッとしたように信ちゃんの眉間に皺が寄って、普段より数倍増した威圧的な目で見下すように私を見るから、心臓が煩くて仕方ない。
『なりますぅ』
「ならない」
『なるっちゅうねん!』
舌を巻いた低音に思わず黙ると、肩を押したことで開いた距離がまたぐっと縮められた。
ゴクリと喉が鳴って恥ずかしい。辛うじて逸らさずにいた私の目を覗き込むように見つめながら、信ちゃんが囁くように言った。
『...ヤるで、俺はヤるからな』
最早誘われているというより、挑まれてるみたい。
けれど、私の唇辺りに掛かる信ちゃんの息が僅かに震えている気がするのは興奮のせいだろうか、それとも私と同じ、緊張...だったりするんだろうか。
『もう諦めたらええんちゃいますか』
ぐい、と首の後ろの手に引き寄せられて唇が触れそうな程に接近する。高鳴る鼓動が全身に響いて周りの音が奪われた。その中に、私を真っ直ぐに見つめる信ちゃんの声だけが紛れて耳に届いた。
『今からもう俺のもんやで』
End.
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