Orange
「...え、何」
ソファーの隣に少し距離を開けて座った丸ちゃんが、落ち着きなく私をちらりと見て目を逸らし、その距離を詰めたから怪訝な顔で聞く。
『何って、何?』
驚いたような、焦ったような、何だか妙に落ち着かない雰囲気が漂う丸ちゃん。
『...え、するやんな?』
自信なさ気な小さめの声。泳ぐ目。
するって、まさか...。丸ちゃんに限ってそんなこと...。
「...何を」
『.......えっち?』
目を丸くして丸ちゃんを見ると、丸ちゃんの瞳も一緒に丸くなった。すぐに不安そうに下がる眉毛が何だか可愛いけれど、なんで丸ちゃんがそんな顔するの。不安なのは私の方なんだけど!
「...なんで」
『え、なんでって...何でやろ...』
引き攣ったような笑みを浮かべて首を傾げる丸ちゃんに鋭い視線を向ければ、一瞬合わせられた目が逃げるように泳いで行った。それでも尚その横顔を見ていると丸ちゃんの顔が僅かに紅潮してくる。
『...と、とりあえずさぁ、シャワー...』
「...............。」
『...は浴びないですよね...』
何も言ってないのに怯えるように私から逃げ続ける視線。
...待ってるって、わかんないかな。ちゃんとした言葉が欲しいのに。ちゃんと、好きって言って欲しいのに。
『...えっと、...えっち、する...?』
やっと私に辿り着いた丸ちゃんの目を、不満を込めて睨みつける。
...だから!私が欲しいのはそんな言葉じゃなくて!
私の迫力によって再び逸らされた目が、今度はすぐに戻って来たからちょっと驚く。
『...したいねん、お前と...好き、やから』
End.
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