euphoria


イリュージョン



『Caretaker!!』の前。

---------------------------------------------

『そろそろお開きでーす!』
『もう?まだ早いんちゃう?』
『何言ってんの!明日早いでしょ!』
『えー!』
『お前が一番遅刻しそうやん。』

久しぶりに、メンバーやスタッフみんなで飲んだ。まだ早い時間だけれど、みんな忙しい人ばかりだから早めのお開き。
私はというと、最近の疲れのせいもあってそれなりに酔っていた。

『#name2#さん大丈夫?』
「うん。大丈夫、」
『結構酔ってるやろ?顔真っ赤やもん!』

心配そうに顔を覗き込んだやすくんが聞いてきた。キョロキョロと辺りを見回して、多分同じ方向の人を探してくれているんだろう。

『あ、横ちょ、#name2#さんと一緒に帰れる?』
『...おん。ええよ』
「...大丈夫だよ、一人で、」
『でも夜やし酔ってるし危ないやろ?』
『...気、遣わんでええよ。送ったる』

よりによって横山くんに送ってもらうなんて。いくら酔っていても緊張してしまう。

『ヨコ、みんなの前で堂々とお持ち帰りすなよ!』
『...っ、せぇへんわ!』
『ほんなら俺、吉田さんを、』
『ばか!』
『痛っ!なんでしばかれなあかんねん!』

渋谷くんが変なことをいうからちょっと変な空気になる。もともとあまり話さない横山くんだから、いつもとそう違わないのだけれど。
みんな散っていく中で挨拶をして二人で歩き出した。

「...ごめんね」
『...や、全然』
「タクシー乗っちゃうから大丈夫だよ」
『...タクシーでも、送ってくわ』

二人でタクシーに乗り込んで家の場所を告げた。少し緊張しながら横山くんをちらりと見ると、窓の外を見たままで全く目が合うこともなく会話もなくて、せっかく一緒に帰るのにと、少しだけ残念に思ってしまった。

『#name2#さん、降りるで。』

重たい瞼を無理矢理開けると、抱えられるようにしてタクシーを降りた。いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。 アルコールと疲れのせいで頭が重い。

顔を上げると見慣れたマンションの前だった。横山くんが鍵を開けている。いつも迎えに来る、横山くんのマンションだ。
あれ、なんで...。

横山くんに支えられて彼を見上げると、無表情というか、いつもより幾分か険しい顔をしていた。
突然、ぼんやりと頭に浮かんだ。

“...俺んち、行かへん?”

さっきタクシーの中で聞かれたことを思い出した。自分で頷いたことも、今になって思い出した。
だから今ここにいるのだ。

部屋の鍵が開けられ部屋に入った。少し鼓動が早いことに気付くけれど、どこかぼんやりとしていて他人事のように感じている。

ソファーに座らされて、なにか飲むか、と聞かれて首を横に振った。
隣に腰を下ろした横山くんが私を覗き込むように見る。

『...具合悪かったりせえへん?』
「大丈夫、」

そのまま無言で私を見ている横山くんにドキリとした。
肩に腕が回ったかと思うと、あっという間に引き寄せられて唇が重なった。

あれ...私、横山くんとキスしてる。ドキドキしている。
嘘、どうしよう。...幸せ。...ずっと好き、だったから。

遠慮がちに入り込んできた舌に自分の舌を絡め取られて深くつながると、肩にあった腕が少し下がって抱き締められた。
唇が離れると見つめられて、少しだけ顔を赤らめた横山くんが言った。

『...#name1#、...シよ』
「......うん、」

初めて横山くんに呼ばれた私の名前は、自分の名前ではないみたいに特別な感じがした。
手を引かれてベッドルームへ行くとゆっくりとベッドに押し付けられて、再び唇が触れ合う。

脱がされているけれど、恥ずかしいより、私に触れる横山くんの手の優しさが嬉しかった。大事にされているみたいで、勘違いしてしまいそうだ。

キスをしながら胸の膨らみを優しく包まれ身を捩る。荒くなるお互いの呼吸が、更に私たちを煽る。
唇を離れ耳や首筋を通って胸へと辿り着いた横山くんの唇が、突起を挟んで優しく愛撫するから小さく声が漏れた。

そこから私を見上げた横山くんが、想像以上に色気を含んだ顔をしていて身体の奥が熱くなる。
下に伸ばされた手が下腹部を撫でただけで中が疼いて、そんなに早く受け入れたいと思っているのかと驚く。

いよいよ下に触れられると、蕩けた蜜を指に纏わせるようにしてから、ゆっくりと指が押し込まれた。じわりと広がる快感に声が漏れると、横山くんが私を見る。恥ずしくて目を閉じると、髪を撫でながら指がより深く押し込まれて奥を撫でる。

胸にあった片手が離れ優しく労わるように私の腰を抱いた。中の指は相変わらず探るように動かされていて、的確に感じる場所を見付けて行く。

こんなやり方をされたら、本当に横山くんに愛されているんじゃないかと勘違いしてしまいそう。

甘い声が漏れると、顔が近付いたのがわかって目を開けた。数センチのところまで来て僅かに微笑んだ横山くんが、啄むようにキスをした。
唇が離れる度に声が漏れると、その度に横山くんの吐息が熱くなる気がした。

私の足の間に入って、素肌の胸と胸がくっついて唇も触れた。あったかくて、幸せ過ぎて涙が滲んだ。

『...いい?』

涙に気付かれないように目を閉じたまま頷くと、充てがわれたものが蜜を絡めるように動いてから、ゆっくりと中に入ってきた。

擦れて痺れるような感覚に身体が震えて声が漏れると、強く抱き締められたから目を開けた。
眉間に皺を寄せ、目を閉じたまま奥まで押し込んだ横山くんが目を開けて私を見た。

『...侯隆、にしてや。今だけ、』
「......侯隆、」
『#name1#、』

キスと同時に緩い律動が始まった。
この背中に腕を回してしまってもいいのだろうかという戸惑いが一瞬頭の中に浮かんだ。けれど、横山くんが私の手を取り自分の首に巻き付けたから、そのままぎゅっと抱きついた。

キスの途中で声が漏れると、唇を離して奥まで突き上げられた。
私の反応を楽しむかのように緩急を付けて突き上げるからしがみつくように腕で締め付けた。

上がってきた横山くんの呼吸と、私を抱き締める腕の力に、余裕のなさを感じて少し嬉しくなる。
顔を歪めて私を見つめる瞳がいつになく真っ直ぐ私だけを見ているから、自分から引き寄せキスをした。

それをきっかけに角度を変えてより激しくなった律動に高い声が漏れる。それでもキスは続いていて、息苦しさに合間に名前を呼ぶ。

「...侯隆っ、...」

唇が離れ私を見た横山くんが、口端を上げて笑うと私の首筋に顔を埋めた。チクッとした痛みに顔を歪めると
同時に激しく突き上げられ声が止まらない。

『...#name1#っ、』

呼ばれて目を開けると視線が絡んで、身体が跳ねた。すぐに私から引き抜かれ横山くんが吐き出すと、私に倒れ込んでまた抱き締められた。
目を開けることも出来ないまま、引き摺り込まれるように意識を手放した。


目を開けると部屋は薄暗くて、少し痛む頭を押さえて横を向いた。
すぐに飛び込んで来た横山くんの綺麗な寝顔を見て、さっきまで私を見つめていた真っ直ぐな瞳が頭に浮かんで目を背けた。

とんでもない事をしてしまったんじゃないかと思った。
いつも仕事の合間なんかに見ているこの寝顔を、こんなにも近くで見ているなんて。
確かに幸せだった。けれど、彼の近くで働く人間として、してはいけないことをした。

彼を起こさないように、静かにベッドを抜け出した。彼の顔を見ると、さっきまでの幸福よりも罪悪感が勝ってしまう。だから背を向けたままで帰る支度をして、足早に部屋を出た。

数時間後、顔を合わせた仕事場であんな事態になろうとは、夢にも思わずに。


End.

- 27 -

*前次#


ページ: