euphoria


ドリーミーナイト




「横山さん」
『んー?』
「重いです、」
『なんでー?』
「...なんでって、」

この酔っ払い、みんなの前なのに隣に座る私に寄り掛かって体重を掛けてくるからヒヤヒヤする。
さすがの安くんもまずいと思ったのか、さっきから何度も無言で侯隆に肘打ちをくらわしているけれど、ヘラヘラしながら『やめろやぁー』なんて言っている。

『そんなんしてたらあとで#name2#さんにしばかれんで』

侯隆の耳元で、小声だけれど少し強めに言った安くんに侯隆が無言で目を向けた。

『...アホか!そんなんせぇへんよ、なー?』

いきなり肩を組まれて顔を近付けられドキッとする。私より先に侯隆をしばいたのは安くんだった。慌てて手を払い除けると、周りを見回した安くんが今度は少し大きめの声で言った。

『よこちょめっちゃ酔うてるやん!もう帰そ!な!#name2#さん、そっち持って!』

慌てて頷いて、安くんに引っ張られるように歩く侯隆を後ろから支えて、まだ残るみんなに頭を下げた。

外へ出てタクシーを停めた安くんに苦笑いでお金を握らされて、車に押し込まれた。よろしく、と手を振る安くんにお礼を言ってタクシーが走り出すと、侯隆が笑っているのに気付いて睨むように視線を向ける。

『焦りすぎやろ』
「当たり前でしょ!」
『別にええやん、そんくらい』
「そんくらいじゃない」
『付き合うてるとか思わへんて』

慌てて侯隆の口を塞いで運転手を見た。幸い気にしている様子はないけれど、これ以上余計なことを言うと困るから「変なこと言うのやめて!」と耳打ちした。
笑いながら何度か頷いて窓の外を見た侯隆に溜息を漏らして、早く着いてと願った。

侯隆のマンションに着いて代わりに鍵を開けると、侯隆は靴を脱ぎ散らかし、他の靴までも蹴散らして先に部屋に入って行った。それを揃えて部屋に上がると、冷蔵庫の前で私を振り返った侯隆の手には開栓済みの缶ビールが握られていた。

「...ちょっと、もー...」
『...なん?お前の分もあんで』

開けないで!と言う言葉は間に合わなかった。開栓されたそれをリビングのテーブルに置いた侯隆が手招きで私を呼ぶ。
無理矢理缶ビールを握らされて乾杯、と缶をぶつけた侯隆は、私に今まで見せたことがない程酔っている。
普段は温厚だと言われるけれど、こんな酔っ払いには少々強い口調でなければ通じない。

『なぁ』
「...なに」
『怒んなや』
「...怒るでしょ」
『ちょ、キスしよ』

普段そんなことを言わないだけに驚いた。口を開けて顔を見た私の背中に、笑いながら腕を回した侯隆が、キスをして舌が唇を割って侵入する。弄ぶように絡められた舌が解けると唇が離れて、動揺が残る私なんかお構いなしに侯隆が笑いながらビールを煽る。

『なぁ、もっかい、』

半ば無理矢理ぶつかるように唇を合わせ、思わず後ろに下がれば頭を引き寄せられ食むようにまたキスをする。

最早楽しんでいるとしか思えない程、アルコールを入れて何度も何度もキスを繰り返す酔っ払いに翻弄されて、ドキドキしているのが恥ずかしいくらいだ。

何度目かわからないキスのあと、気だるそうにソファーに寄り掛かった侯隆を引っ張るように立たせベッドルームへ歩かせた。

「もう寝て!明日も仕事!」
『...んー、むっちゃ眠なってきた、』

ベッドに倒れ込んだ侯隆に布団を被せようと手を伸ばせば、その手を掴まれて侯隆の腕の中へと引き寄せられた。

『...気持ちええわぁ。めっっちゃフワフワしてんで!めっちゃ!』
「...............。」
『ちょ、無視すんなや!』
「...うん、よかったね、」

腰に絡み付いた腕に締め付けられて苦しい。こんな甘え方、今まで侯隆にされたことない。だから、いつもの何倍もドキドキしている。私も酔っていてよかった。
けれど、やっぱり愛しくて髪を軽く梳いてみると、顔を上げた侯隆の唇が弧を描いたまま、またキスをした。

「...本当に私のこと、好きなんだね、」
『...そりゃ好きですよぉ?当たり前やろぉ...』

ふざけたように言ってから、何がおかしいのか目を閉じたままずっと含み笑いしている侯隆を呆れたように見つめた。
寝息を立て始めた侯隆は、きっと明日になったらこのことは覚えていないんだろう。どうせなら素面で言って欲しかったけれど。

こんな時だからこそ自分も甘えてみればよかったかな、なんて、さっきまでのいつもより少し冷たい態度を後悔して侯隆の胸にぐりぐりと顔を埋めた。

『...ふふっ、...それ、めっっちゃかわいい、』

起きているのか寝惚けているのか寝言なのか。わからないけれど、抱き締める腕に力が篭って胸まで締め付けられた。

愛しい気持ちでいっぱいでどうしようもなく持て余したこの想いを込めてキスをすると、侯隆の手が優しく髪を撫でた。


End.

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