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『お前が言うたんちゃうんかい』
「え、」
ちょっと待って。なんで私は寝てるの。なんで信ちゃんが私を見下ろしてるの。なんで私は、信ちゃんに押し倒されてるの。
色々とおかしい。
『家来る?言うたやろが』
言った。確かに言ったのは私。
最近ソフレって流行ってるみたいだし、信ちゃんと一晩一緒に居られる口実になればと思ってダメ元で言ってみた。信ちゃんは否定的かと思ったけど、意外にも『ええよ』なんて返事だったから、一緒に家に帰って来たのに。
「だって…ソフレでしょ…?」
『添い寝だけてそんなん誰が信じんねん』
言ってるそばから私の手首をベッドに張り付けるように握り、痛い程まっすぐに私を見つめるから、心臓が煩い。
どうしよう。ドキドキして、おかしくなっちゃいそう。
「...信ちゃん、待っ」
『5秒だけ待ったるわ』
言葉のわりに握られた手首もそのままで、何も言葉が見つけられないから焦る。
「ちょっ、一回離れ」
『あかん』
言葉を遮られて信ちゃんの顔がぐっと近付いて来たからますます鼓動が早くなる。威圧的な信ちゃんが至近距離で私を見つめ、顔がゆっくり傾けられた。
『逃すわけにいかんねん』
噛み付くようなキスで塞がれて、一瞬心臓が止まったようにすら感じた。私を求めるように性急に何度も合わせられる唇。体を這う手。
キスの合間に口の端を吊り上げて私を見下ろした信ちゃんと目が合って、覚悟を決めた。
End.
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