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やっぱり緊張する。
終電がないからと家に来た亮が仔犬みたいな顔で縋るから、思わず「...しょうがないなぁ...」と言ってしまった。
私が座るソファーの下で胡座をかいてテレビを見ている亮は、自分の家みたいにくつろいでいる。
「...私、」
言いかけたら亮が振り返ったからドキリとした。目を逸らして何でもないふりをしてソファーから立ち上がるのを、亮がずっと目で追うからますます緊張してしまう。
「...寝るね」
『あ、おん』
「..........。」
何となく「おやすみ」と言うのが恥ずかしくて逃げるように寝室に入ると、リビングで点いていたテレビの音がぷつりと途切れた。
すると寝室に亮が入って来たから思わず目を丸くする。まさか、...まさかとは思うけど、まさか...!
そのまま私の方に歩いて来ると、亮の片足がベッドに乗り上げた。
「ちょ、」
『何?』
慌てたように呼び止めた私を見た亮は、何で呼び止められたのかわからないという感じでキョトンとして私を見ている。
「...ソファーで寝てよ」
...だってここに寝られたら、緊張しちゃって一晩中寝られる気がしない。
すると、私の言葉で亮の口が少し開いて、眉間に深い皺が出来た。
『なんで俺やねん腰いたなるやん!』
なんで俺?ってひどくない?私がソファーで寝ろってこと?
怒っているというよりは駄々を捏ねる子供みたい。眉を下げて、目尻もいつもよりも下がって唇が少し尖る。
「ここ私の家!」
『そんなん知っとるわ!』
下半身が布団の中に入ったまま顔を逸らした亮を見て、布団から出て立ち上がった。
...嫌なわけじゃない。緊張しちゃうだけ。照れ臭いだけ。そんな当たり前のように一緒に寝ようとされて、素直にそこに居られないだけ。
だから顔の火照りを隠すように顔を背けて、リビングに逃げる。
『おい、どこ行くねん』
部屋を出る前に呼び止められて思わず足を止めてしまった。絶対顔、赤い。顔が熱い。だから振り向かずに言った。
「ソファー」
『ちょ…待って、』
あまりにも焦ったような声が聞こえてきたからちらりと振り返れば、ますます下がった亮の眉尻。
...何をそんなに慌ててるの。そんな顔されたら、期待しちゃうじゃない。
やっぱり照れ臭くて前を向けば、亮が拗ねたようにボソリと呟いた。
『...一緒に寝たってええやん...』
顔が更にカッと熱くなる。するとベッドが軋む音がして後ろから腕を掴まれた。驚いて思わず振り返れば、すぐ傍に立っていた亮が私の様子を伺うようにちらりと見て腕を軽く引いた。
『...あかんの...?』
そんな言い方をされて、断れるわけがない。俯いて首を横に振れば、腕を掴んでいた亮の手がするりと滑り降りて手を握る。私の視界に入って来た亮が少しカタい笑顔で控えめに手を引っ張ってベッドへ促すから、緊張と期待で眠れない夜になることを確信した。
End.
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