17
二人の間に少し開いた距離に、空白の時間の長さを感じていた。数ヶ月会っていなかったくらいで空白の時間、なんて大袈裟だけれど、大人になるにつれて次第に距離が出来てきたのは勘違いではないはずだ。
ソファーの隣でテレビを見つめる忠義を盗み見る。何度見ても見慣れない。子供の時から知っているこの顔が、テレビで見るようになってから見違えるほどに成長を遂げてここにあるのが、信じられない。
...何をしに来たの。ただ会いに来るなんて今まで何度もあったことなのに、この想いを自覚してからは特別でしかない。会う意味を考えてしまう。私達は幼馴染みという関係以上には何もないのに。
2人で胸の上まで掛けていた小さめの毛布をぐい、と引っ張られドキリとして慌ててその横顔から目を逸らした。
「...毛布、私が持ってきたんだけど」
動揺を隠すために素っ気なく言って毛布を引けば、忠義の目がこちらに向いてムッとしたように目が細められる。
『ちょっとぉ引っ張らんといて!』
また自分の方に毛布を引っ張り、忠義が唇を少し尖らせる。
「だって忠義半分以上掛けてる!」
『当り前やん、俺の方がでかいねんで?はみ出るもん』
拗ねたように言って肩まで毛布を掛け直す忠義を見て、思わず口元が緩んでしまった。言葉遣いや甘えたような口調は子供の頃から変らないから、それが何だか嬉しくて。
「もー、寒い!」
がっちりと毛布を固定して膝を抱えた忠義が、横目でちらりと私を見て再び視線をテレビへと戻した。
それから何故か少し腰を浮かせて座り直すような様子を見せてから、その目がまた私を見る。
『...ほんなら、こっち来たらええやん』
ドキリとしてしまった。少し近付けば、という意味だろうけれど、忠義の腕が私の背中の方に回ったから。
意識してしまったのが恥ずかしい。けれどそんな私を笑うことなく、優しい笑みを浮かべ背もたれにあった忠義の腕が私の背中に触れた。
『...抱っこ、しよ。そしたら寒ないで』
背中から肩に移動した忠義の手に引き寄せられると、その腕の中に包まれて忠義の真ん中で抱き締められた。すぐに感じた忠義の少し早い鼓動に、顔が火照って仕方ない。寒かったはずなのに、どんどん体温が上がっていくみたい。
『...ドキドキしてるやろ』
私の首筋に埋められた顔がどんな表情を作っているのか見えないのがちょっと残念。
「...忠義がね」
『...んは、俺は...してるで』
照れ隠しのようにより強く締め付けられた体が震えてしまいそうだった。
ただ胸がいっぱいで、顔を上げた忠義が目を合わせずに笑うから、それを見て笑った。
『お前にもして欲しいねん』
ちらりと伺うように私を見た忠義の顔が近付いて、あっと言う間に唇が触れて離れた。再び目が合うと凄い勢いで顔が紅潮していく気がしたから、思わず目を逸らした私を忠義が笑いながら抱き締めた。
End.
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