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急すぎて、ドキドキする間もなかった。仰向けでソファーに転がる私を微笑みながら覗き込んだ章大の唇が私にキスを落とす。
押し付けられた唇が離れると、章大が笑った。
『あは、そんな赤くなるぅ?』
睨むように章大を見てから目を逸らした。
...信じられない。なんでキスなんかしたの。ついさっき私のことを、“大事な幼馴染み”って言ったばかりなのに。
「..............、」
『キスしかしてへんのに』
...キスしか?
章大にとってはそうかもしれないけど、私にとってはただのキスじゃないのに。好きな人とするキスは、ただのキスなんかじゃない。
「......びっくりしただけ、」
『ふーん』
口の端を上げた意地悪なこの笑い方は好きじゃない。私をからかったりする時に見せるこの顔は、いつもの章大と全然違うから、私を馬鹿にしたように見えるから、苦手。
「...ちょ、っ」
突然章大が私を跨いでソファーに乗り上げてきたから思わず体を起こして肩を押した。
私を見つめたままの章大が私に顔を近付けるから、片手をソファーについて体を支え距離をとる。
『...何、あかんの?ここまでさせといて?』
その言葉に動揺する。いつもと違う微笑みも、前髪の隙間から覗く目も、今まで見た事のない色気も、全てが私の鼓動を早める。
「...勝手に、したんでしょ、」
『ちゃうよ』
優しい声色に気を取られていたら章大の手が私の首元に触れたからびくりと体が揺れた。すると、ソファーに付いていた腕をいきなり掴んで引かれ、倒れ込んだ体をその手に支えられ、ゆっくりとソファーに寝かされた。
髪を撫でながら章大の顔が至近距離まで近付いて私を見つめる。
押し退ければ逃げられるのに。突き飛ばすことだって出来るはずなのに。...悔しいのに、動くことが出来ない。
この状況に期待してしまっているから。
『...お前がして欲しい顔、してたからやん』
言葉すらも出て来なかった。
否定せずにいたら、このまま章大と...
『...どうする?...する?しない?』
私の苦手な顔で笑いながら、章大の指が私の髪を優しく梳く。
なかなか言葉が出ない私を見つめたまま次第に章大の笑みが消えて、髪をくしゃりと掴んだその手が僅かに震えたから、期待に胸が高鳴る。
「......する」
章大の手がすっと動いて頬を優しく包んだ。ゆっくりとしたキスが落とされて、熱い吐息と共に噛み付くように唇を塞がれた。
End.
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