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休憩中、ひとつだけ体育館の隅に転がっていたバスケットボールを拾ってからその場に腰を下ろした。
コートの周りに座り込む部員達を見ながら、その中に彼の姿を探していた。
すると急に隣に誰かが腰を下ろしたから目を向けると、たった今まで視線をさ迷わせ探していたヨコがそこにいたからドキリとした。
「...お疲れ」
言った言葉に返事は返ってこなくて、ヨコが持っていたドリンクを流し込むのを横目で盗み見ていた。
『...降ってきたな』
その言葉に視線を外に向ければ、どんよりとした空から雨粒がポツリポツリと落ちている。
「あ、本当だ」
このくらいの雨なら傘がなくても大丈夫そう。けれどヨコはそわそわしたように外を見ている。その姿を見ていたらさっき授業が終わってから部活の前に、渋谷くんとヨコがどこだかに寄って行くと話していたことを思い出して納得した。
『傘ある?』
「んーん」
一緒に外を見ながら首を横に振ると、ヨコが私を見た気がしたから目を向けた。目が合ってすぐにその視線を逸らされて、ヨコがドリンクボトルを忙しなくクルクルと回している。
『...ちょっと遅なるけど、...待っててくれたら送るで』
「.........え?」
思いもよらない言葉に耳を疑って声にならない声で聞き返した。
私と目を合わせようともしないヨコは、『傘あるし』と呟いて耳を赤く染めてドリンクを飲み干した。
「...だって、渋谷くんと...約束...」
『...なんで知っとんねん、』
小さく呟いてまた外を見つめたヨコを見ながら、動揺を誤魔化すように口元を手で覆った。
「...悪いよ、」
『...ええやろ』
「でも、」
『...大丈夫やって。送る』
私を見たヨコが目を合わせてそう言った。
...私、今どんな顔してるんだろう。顔、赤くないかな。
急に恥ずかしくなって目を逸らすと、ヨコも顔を背けて小さく呟いた。
『...察してくれへや、』
「...え?」
『...俺がそうしたいねん』
End.
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