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今日は夜まで降らないって言ってたじゃない。天気予報は夕方まで太陽のマークで、降水確率だっていつもより低かった。大学は午前中だけだし、大丈夫だと思って傘も持って来なかったのに。
大学を出たばかりだったから、公園のベンチの屋根の下で雨宿り。白い服だから、透けたら困るし。
梅雨って嫌い。ジメジメするし髪型は決まらないし。足に水撥ねるのも嫌。帰りに丸ちゃん達と遊びに行けないのも、...やだ。
湿っているからベンチに座ることも出来ず、空を見上げて立ち尽くしていた。雨って周りの音を遮るみたい。いつもより静かで、何だか妙に寂しくなる。
俯いていて足元の石ころを足で軽く蹴飛ばしてみると、視界に見慣れたスニーカーが目に入って慌てて顔を上げた。
『雨宿り?』
...びっくりした。私に笑顔を向けて丸ちゃんが隣に並んだから。
「あ、...うん」
どうしたんだろう。私を見つけてここに来てくれたんだとしたら嬉し過ぎる。
空を見上げながら雨の滴で濡れた腕を手で拭う丸ちゃんをちらりと見て言葉を探した。...どうしよう、緊張してる。
『...俺も』
「...ん?」
『昨日は傘持ってたのになぁ』
丸ちゃんの手を見つめたまま暫く動きを止めた。そして横顔に視線を移して、少し赤いような気がする丸ちゃんを見つめた。
...言ってる意味がよくわからない。
「...............、?」
『え、何?』
私の視線に気付いた丸ちゃんが私の方を見て、引き攣ったような笑顔を浮かべて首を傾げる。
「...傘?」
『..............!』
私の言葉を聞いて、私から外れた丸ちゃんの目が見開かれた。ますます紅潮していく顔を見つめながら困惑する。
「...傘、持ってるじゃん...」
右手に持った折り畳み傘に視線を落としたまま反対の手で口元を覆った丸ちゃんの尋常でない紅潮ぶりに、次第に胸が高鳴る。
「...なんで、雨宿り...?」
口元の手が滑って、今度は目元を覆う。下唇を噛んだ丸ちゃんは、少ししてから『あー...』と声を漏らした。
『...忘れてもうた、』
「え?」
『...傘隠すの、忘れてもうた』
「...............。」
『声掛けよう思たら、…緊張して』
濡れた折り畳み傘から滴り落ちた雫を見送って、今度は私が頬を紅く染める。2人無言で雨の音だけを聞きながら、この関係を進展させるための言葉を探した。
End.
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