04
『なぁなぁ、』
章大の声できつく閉じていた目を開いた。金髪の少し長めの前髪から覗く細められた章大の目が私を見つめる。今までにないくらい、優しい笑みを浮かべて。
「ん、?」
少し上がった息で聞き返せば、細められた目がますます細くなって私の髪を撫でた。
緩やかな律動がますますスローになり、章大が私の中を味わうようにゆっくりと腰を揺らしながら私に笑いかける。
『…ふふっ』
「何っ、」
笑い声が漏れて私から少し顔を逸らすと、章大の口角がまた少しひくりと上がった。
長く一緒に居たけれど、章大のこんな表情を見るのは初めてかもしれない。
『やっぱ、っ何もない』
「…何、っ」
覗き込むように下から章大を見上げると、章大の視線が私に戻って来てまたふわりと笑う。
短いキスが降ってきて、汗で湿った私の額に張り付いた前髪を柔らかく払い、そこにもキスを落とす。
『…や、俺今お前抱いてんねやー思て』
心臓がドクリと脈打った後、苦しいくらいに胸が締め付けられた。
何年もかけてあたためてきたこの想いが通じ合ったのはほんの2時間前のこと。そんな言葉が出てくる程章大が私を想ってくれていたなんて、知らなかった。思ってもみなかった。私ばかりこんなに大きな気持ちを持て余しているのだと、ずっと思っていたから。
「…何それ、」
目の奥に込み上げてくる熱いものを隠すようにわざと素っ気ない態度で目を逸らした。
ふっと笑って少し早められた律動に目を閉じると、涙でじんわりと瞼が熱くなる。
私を抱き締めながら章大が短く吐き出した息に快感の声が僅かに混ざっていて、私の体も胸の奥も更に熱くさせられる。
『もう俺のもんやねんで?すごない?』
泣きたいわけじゃないのに。今の章大の言葉で、これまでの切なさも小さな喜びも、全ての想いが走馬灯のように駆け巡ってどうしようもなく幸せで堪らなくなってしまった。
閉じている私の目元を章大の指がなぞる。目を開ければ睫毛に僅かについた滴で、涙を見られてしまったことに気付いた。
それでも目が合えば、幸せそうに口角の上がった唇が私に触れる。だから耐え切れず、目尻から涙が流れ落ちた。
動きを止めた章大が指で涙を拭って、慰めるように髪を撫でながら顔中に優しく唇を触れさせる。
『このままずーっと入ってたい。お前ん中』
見つめた章大の瞳が揺れていた。
すぐに誤魔化すように深くキスを落とされて、それが涙のせいかどうかはわからなかった。
...けれど、どっちでもいい。深く絡み付くキスで上がった息さえも奪われて、震えるような吐息と共に吐き出された愛の言葉で、章大の想いが伝わったから。
End.
- 4 -
*前次#
ページ: