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久し振りに会ったすばるが目を合わせてくれない。やっと二人で会えたのに。楽しみにしてたのに。
ジョッキのビールを口に含んで向かいの席からチラチラと私を見ているすばるは、ずっと目を泳がせている。
「...何」
はっとして私に目を向けたけれどそれすらも一瞬で逸らされた。二人で居るのに無言だからちょっと気まずいじゃない。
すばるって、もしかして私のこと...とか思ってたのに、今日のすばるの様子を見てると振り出しに戻ったみたい。
「さっきからどこ見てんの」
『...別に』
その目が逸らされる前に少し下に動いた視線の先を指で辿ったら、僅かに指に感じた膨らみ。
「あ、ニキビ?」
『......ニキビ...?』
明らかに驚いたように目を丸くしてやっと私を見たすばるに、鎖骨付近のそれを指差して見せる。
「結んでないと髪当たってたまにできるの」
じっとそこを見つめてから、納得したように何度も頷いて不自然に口元を掌で覆ったすばるが『...ふーん』と言ったから怪訝な顔で見つめた。
...なんかちょっと雰囲気が変わった。いつものすばるに戻ったみたい。
...ニキビのせい?なんで?そんなことで気まずくなる必要ある?
...もしかして、
「...キスマークだと思った?」
緩んだ口元に唐揚げを運んでいたすばるに向かって言ったら、私を見ると同時に箸から唐揚げが転がり落ちた。
『...誰がやねん』
おかしな返答をしてテーブルに落ちた唐揚げを拾い上げ皿に乗せるその姿を見て、思わず口元が緩む。
「...あ、動揺してる♡」
からかうように言えば顔が強ばって私を睨む。けれどすぐにその目は唐揚げに向けられた。
『...してへん』
「してる」
『してへんわ』
「なんで?」
『あ?』
眉間に皺を寄せて私を見たすばるに、ドキドキしていた。
...チャンス、かもしれない。
「...キスマークだったら、困る?」
ひゅ、と息を呑んだすばるが周りを見回して私に控えめな声を投げた。
『...おい、人居んねんで、』
だって、もう引き下がれない。このタイミングを逃したら、もう聞くことは出来ない気がする。
「...私のこと、好きだったりして」
『...はっ、』
鼻で笑うわりに目は泳いでまた周りを見回す。それがあまりに挙動不審だから、祈るようにもう一度。
「...ねぇ」
『...黙れや』
「...ねぇってば、」
『黙れや、唇でその口塞いだろか』
私を睨み付けた目はすぐに力なく視線を落とした。思わず溢れた笑みにすばるの顔が少し赤くなった気がする。
「...うん」
『......あとでな』
End.
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