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緊張のせいか、いつもよりも大分アルコールを入れるペースが早かった気がする。...けれどいまいち酔えなかった。
告白、までは行かなくても、好意を抱いていることをそれとなく伝える決意をしてこの飲み会に参加した。
相談がある、でも、ちょっと話したいことがある、でも何でもいいから、亮ちゃんを誘い出す理由をずっと考えながら様子を伺う。
離れた席にいる亮ちゃんを何度も見ていたから何度も目が合ってはいたのに、隣に移動する勇気すら出ないまま一次会が終わろうとしていた。
それぞれが荷物を持って外に出る中、後ろからその背中を見つめて拳を握り締める。言うなら今しかない。
「亮ちゃん、」
心臓がバクバクして声が上擦ってしまった。振り向いた亮ちゃんが私を見て笑みを浮かべるから、ますます緊張が高まる。
『ん、何?』
「...あ、...あの、さ...」
『うん』
酔っているせいかいつもよりも口調が柔らかくて、ふにゃりと笑うからその笑顔にきゅんと胸が締め付けられる。
「...二次会、行く?」
『おん。行くで。行く?』
「あ...うん...」
目を見ていられずに逸らしてゴクリと唾を飲んだら、思わず言葉まで飲み込んでしまった。
『ん。...ほんなら...行く?』
「...ん、」
進行方向を指差して亮ちゃんが笑うから、とりあえず頷いて、思わず苦笑い。緊張で先延ばしにしていた自分が悪いのだけれど、こんなに緊張したのだからダメ元で言ってみればよかった。...そんな気持ちとは逆に、言わずに終わったことに少し安堵もあったのかもしれない。
ふたり並んで歩き出すと、亮ちゃんが俯いてふっと息を漏らして笑ったからちらりと目を向ける。
『...なーんや』
独り言のように小さく呟くから、思わず「え?」と聞き返すと、亮ちゃんが私を見てから前を向いて言った。
『”抜け出そう”のお誘いか思てドキドキしてもうたやん』
時が止まったように頭が真っ白になった後、一気に血が巡って顔がカッと熱くなった。視線の先の亮ちゃんは、相変わらず笑いながら下を向いている。
...ドキドキした...?確かにそう言った。からかってるの?そんな顔されたらわからない。
『...そんなじっと見るのやめてぇや...』
片手で目元を覆う亮ちゃんの口角は上がっていて、照れ笑いしているようにも見えるからますますわからない。
それでも期待に胸が高鳴って手が震えた。
覆っていた手で目を擦ってこっちを見ると、その目はまたどこかへ行ってしまった。
『...どうする?』
「...え、」
『今ならまだ、間に合うんちゃう?』
ちらりと私を見てから前方の友人達に目を向けて、亮ちゃんが私の腕を掴み足を止めた。
『...行く?』
伺うように私に向けられた瞳から目が離せない。急かすように軽く引かれた腕が熱い。
小さく頷けば亮ちゃんが笑った。腕を引かれるままに逆方向に歩き出すと、滑り降りた手に指を絡め取られ、振り向いた亮ちゃんの照れ笑いに胸が甘く締め付けられた。
End.
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