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いつも私に触れる手は思わせ振り過ぎる。私に向けられるその笑顔も、優しい言葉も、想いを加速させるのには充分過ぎた。
今、私の頬に触れる章大の手は落ちた睫毛を払うためだと言うけれど、あまりにもナチュラルに私に触れながら笑うから、ドキドキする。
紅潮してしまった私の顔を見ても笑顔を崩さない章大を見つめて、頬に触れるその手を掴んで下ろした。
「...好きになっていい...?」
『えぇ?』
私の手を振り払うこともなく、より深く笑い皺を作って章大が首を傾げる。
「...好きになっちゃうかも」
言わずにはいられなかった。大きく膨らんだ想いを抱えたままこれ以上こんな事をされたら、どんどん臆病になってしまう。章大のその無意識かもしれない言動が、人を傷付けることになるかもしれないと、章大はわかっているんだろうか。
『何それぇ』
「...ダメなら、そういう事しない方がいいよ、」
笑う章大から目を逸らして俯いた。まだ火照ったままの顔を見られていることに耐え切れなかったから。
掴んだままでいた章大の腕からゆっくりと手を離すと、黙ったまま顔を逸らした。
『...そういう事って、こういう事?』
章大の指が再び頬に触れたからピクリと体が揺れた。その手をやんわりと払い除けて章大を見遣れば、笑みを浮かべて私を見ていた。
...なんか悔しい。簡単にこんな事して弄んで、私ばかりドキドキさせられて。
「...あと、手...握ったりとか」
睨むようにして訴えれば、章大が俯いて考え込むような仕草をして見せた。
『…そうかぁ、』
そうだよ、の意味を込めて目を合わせずに頷くと、少しの間の後、俯いた視界に章大の手が伸びて来て私の手を取った。
思わず顔を上げて目を向ければ、手はしっかりと繋がれて真っ直ぐな目は私を見つめ、章大の口元に笑みが浮かぶと同時に目は逸らされた。
『...するよ』
指を絡めるように握り直された手に、胸が高鳴る。核心的な言葉なんてまだ何も貰ってはいないのに、章大の手は私を勘違いさせるのに充分過ぎた。
『好きになってくれるなら、する』
End.
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