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『あーあ、かわいそ』
たった今私に告白してくれた男の子の背中を見送りながら、丸ちゃんが私の隣に並んだ。
なんでよりによって丸ちゃんといる時なの。
私たちに気を遣って離れた丸ちゃんに私の言葉が聞こえていないかヒヤヒヤしていた。だから、出来るだけ小さい声で相手に言った。
“好きな人がいる”
『あいつ、めっちゃええ奴やで?』
「...知ってる」
かっこいいしスポーツも出来るしわりと人気がある彼の告白を断ったの、誰のせいだと思ってるの。
歩き出した私の後ろをついて来た丸ちゃんが早足で隣に並ぶと、首を傾けて私の顔を覗き込む。
『...ほんなら、何でフったん?』
...気付いてるのかと思ってた。私の気持ちに。私の気持ちを知っていてそんな事を言うのなら、丸ちゃんは本当に私をただの友達としか思っていないんだろう。
『幸せにしてくれそうやん』
その言葉に苛立った。勝手に好きになったのは私なのに。丸ちゃんは何も悪くないのに。
もしかしたら、いけるかも。...なんて考えてた昨日の私を自分で嘲笑ってやりたい。
「...丸ちゃんには関係ない、」
覗き込んでいた丸ちゃんが体を起こして黙ってしまった。
こんなのただの八つ当たり。でも苛立ってどうしようもない。
謝らなければとは思うのに、唇を噛んだまま言葉が出て来ない。
『...あるよ』
ボソリと呟かれた言葉は予想外のものだった。それでもその意味を考えた時に『友達だから』なんて言われたらかなわないから、突き放すように言った。
「...ないよ」
『ある』
今度ははっきりと聞こえたから丸ちゃんを見遣った。目が合うとすぐに逸らされ、俯いてから口元に笑みを浮かべた丸ちゃんの横顔を見つめる。
『...幸せになって欲しいもん』
...そんな言葉は狡い。
期待させるようなそんなセリフを吐きながら『友達』なんて、絶対に言わないで。その気がないなら、その言葉も思わせ振りな態度もいらないのに。
『...あ、でも、』
私をちらりと見て言い掛けた言葉を飲んだ丸ちゃんの顔が、薄らと赤みを帯びてきたから鼓動が次第に早くなる。
『...俺も幸せなりたいから、...やっぱあいつはやめといて』
...冗談、なんて今更言われたらどうしよう。丸ちゃん以上に真っ赤に染まった顔を隠すように俯いて、震える声を吐き出した。
「...どういう意味、」
『...俺らふたりで居ったら、幸せになれると思わへん?』
End.
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