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突然夜中に電話が来たから驚いた。
こんな時間に誰よ、と思ったけれど章大の名前を見た途端嬉しくなってすぐに電話に出た。
“暇やから”
それでもいい。暇潰しの相手に私を選んでくれたことが嬉しい。昼間大学でも会っていたのに、また私を選んでくれるなんて。こんな時間に掛けてくるのは珍しいけれど。
...そういうとこがダメなんだと自覚はしている。
章大に彼女がいたときから何度も諦めようと決心したのに、すぐに揺らいでしまう。章大が言う言葉、する行動、些細なことが嬉しくて幸せを感じてしまうから、どうしたって章大を振り払えない。
今更明日の約束を後悔していた。
それなりに仲の良い友達だけれど、章大以外の男友達と2人で出掛けたことなんかなかった。だから章大と話していたら、なんだか憂鬱になってくる。
すると突然話が途切れて、静かな空間に沈黙が流れた。
『...なぁなぁ』
さっきよりもトーンの下がった声で章大が沈黙を破った。
「ん?」
『...明日、会われへんの?』
少し驚いて、動揺した。
明日はあの人と2人で出掛けると、帰り際に言ったはずなのに。
「だから、明日は...」
戸惑っていた。会われへんの?なんて、そんな風に言われたら勘違いしてしまいそう。
『...ん、知ってる』
自分から章大に話したのは少しでも気にして欲しかったからだと、今になって気付いてしまった。私は狡い女だ。
『...なぁなぁ』
胸が高鳴って、見えるはずもないのに思わず頷いた。緊張で渇いた喉が張り付くような感覚で、上手く声を出すことが出来ない。
「...何、」
やっと出て来た声は上擦って掠れた。黙ったままの章大を待つ時間は長く感じて、じわりと汗をかいた手を握り締めた。
『好きになってもうた』
頭が真っ白になった。ずっと欲しかった言葉なのに、信じられない。本当に私に向けられた言葉なのか、わからない。
え、と情けない声で聞き返すと、章大は落ち着いた声のまま言った。
『だから明日な、行って欲しくないねん』
息をするのも忘れた。心臓が飛び出しそうな程鼓動が早くなって胸が苦しい。自分の心臓の音が煩くて、章大の声を聞き逃さないように、震える手で携帯を耳に押し付けた。
『あいつんとこ、行くのやめてや』
聞いたことがないくらいトーンの低い章大の声が私の声を奪った。電話越しに何度も頷くけれど、震えるような呼吸が言葉の邪魔をする。
...お願い、どうか早く伝えさせて。
『俺と、一緒に居って』
End.
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