08
油断、してた。まだ早い時間だし、もう少し一緒に居たいと思ったから飲み直そうと家に連れて来た。...まではよかったけど、さっきからちょっとソワソワしているすばるを盗み見て、嫌な予感。
『今日…』
「泊めないよ?」
先手を打った。
すばるのことは、好き。ずっと好き。けど、他の女の子と一緒になってはいけない気がする。
手は早いイメージ。体の関係を持てば距離は近付くと思うけれど、私のことを好きじゃないんだったら、ヤられ損。
『..............。』
「..............。」
すばるはこっちを見ることもないまま黙って俯いている。
女を誘うのは慣れてるのかと思ってたけど、思いの外わかりやすくてぎこちない。こんなモーションをかけられたことのない私にもわかるくらい挙動不審。
いつもこんな風に誘ってきたの?私が言うのもなんだけど、なんか...下手くそだね?よくヤらしてもらえたね?
すばるがちらりと私を見たからドキリとした。すぐにまた私から逸れた目は、爪を弄っている自分の指へ向けられ、すばるがボソリと呟いた。
『…さては生理やな、』
「違う」
動揺がバレないように、出来るだけテンポよく。...けれど、テンポが悪いのはすばるの方だ。私をチラ見して目を泳がせると、溜息を吐いて顔を背ける。
『違うならええやんけ』
...ちっちゃい声。
すばるってイメージ的にすごい肉食系で、ガバッと行ってオラオラな感じなのかと思ってた。
「…何がいいの?」
飲み直すと言ったのに、すばるのグラスのアルコールが減っていないことに気付く。汗をかいたグラスの下には水溜りが出来ていて、そこに無駄に指を這わせながらすばるがまた私を見た。今度は目は逸らさずに、威圧感のある上目遣いで。
『…泊めて』
...誘い方は下手くそだけれど、やっぱり目的はソレらしい。
「...最初からそのつもりで...」
『当たり前やんけ!なんであかんねん抱かせろや!』
すばるが急に声を張ってバンと一度テーブルを叩いたから、驚いて目を丸くしてすばるを見た。けれど、若干尖った唇のせいで、勢いも尻窄み感が半端ない。
...ほら、私より先にまた目、逸らしちゃった。
「...なんで...?」
『...あ?』
「なんで私なの」
その質問にすばるがゴクリと喉を鳴らしたから、何だか妙に緊張してしまった。また目が泳いでますます挙動不審なすばるを見たら、耳が真っ赤に染まっていたから、もう期待しかない。
『...なんでって、...そらアレやろ、...お前がええねん。...すき、やから、』
End.
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