Affection
「...なにしてた?」
『んーと、ギター練習したり覚えたり...うん、諸々』
「そうなんだ」
きっとスマホを肩と耳に挟んでいるから、少し声が遠い。
年末が近付くにつれてアイドルも忙しくなるみたいだから、最近はあまり会っていない。少し前までは週に何度も会っていたから、寂しいと言うよりなんか物足りなくて電話を掛けてみた。
でもよく考えたら別に用はないし、聞きたいことも話したいこともこれと言ってない。
『電話珍しいなぁ』
「...暇だから」
ふふ、と笑った声が急に近くなる。
『ほんまは寂しいくせにぃ』
思わず黙ると、お互いの部屋が妙に静かで音がないから、一瞬まるで同じ空間にいるような錯覚に陥った。
『あは』
「...違うよ、寂しいわけじゃない...」
本当に寂しいわけじゃないんだよ。会いたいとは思うし声を聞いてしまえば触れたいとも思うけれど、ただ声が聞きたかっただけ。
『最近は会うてへんしな』
「うん、どうしてるかなーって」
『窓、開けてみ』
思わずベッドから立ち上がった。
「...え!嘘...」
一気に早くなる鼓動。
すぐそこのカーテンを勢いよく開けて窓を解錠するけれど、慌てて上手く開けられない。やっと開いた窓から外を見遣った。
『................。』
「................。」
『んふふ、居るわけないやろ』
開いた窓の外にはいつもの景色しかなくて、章ちゃんの言葉に大きな溜息をついて窓をピシャリと閉めた。
『ごめーん』
「................。」
『なぁ、ごめんてぇ』
わかってる。だってよく考えたら電話に出た時確かにギターの音は聞こえていて、話してる途中でギターをケースに仕舞うような音も聞こえていたんだから。外にいるはずがないなんて最初からわかってたのに、思わず慌てちゃって、ちょっと恥ずかしいだけ。
『15分』
「え?」
『今家出るから、次は玄関開けて』
「え、」
章ちゃん...と呟いた時にはもう電話は切れていて、その優しさに胸が熱くなる。
“寂しくない”なんて強がりも、“来て欲しかったわけじゃない”なんて我儘も、きっと『わかってるよ』の言葉ひとつで甘やかされてしまうのだから、章ちゃんにはいつまで経ってもかなわない。
End.
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