cop off!!
『えー明日ぁ?ほんまにぃ?行く行く!当たり前やん!めっちゃ楽しみ!』
...へぇ...行くんだ。明日も夜から飲み会だから、早い時間にうちに来るって言ってなかったっけ?なのに朝から行っちゃうんだ?明らかになんかありそうなそのバーベキュー。
向こうで女子みたいなテンションで女子と約束をしている章ちゃんを軽く睨んで通り過ぎた。
私と付き合ってること、言ってないのかな。...まぁ、言ってて誘われてるのかもしれないけど。
それでも少し気を遣って欲しいと思う瞬間がある。あの子たちも、章ちゃんも。
この前は『付き合いだからしょうがない』と、約束をキャンセルされてカラオケに行った。
女の子とは常にニコニコして話している。私には向けないような笑顔で。
私にしか見せていない(と思う)毒舌は、最初こそ嬉しいと思ったものの、こうも差を付けられるとさすがに腹が立つこともある。
だから、珍しく声を掛けずにそのまま大学を出た。今日の夜も飲みに行くと言っていたし、どうせ一緒に帰れないんだから。
23時。2本目のビールを開けたところでインターホンが鳴った。モニターに映る章ちゃんを見て驚いて玄関のドアを開けた。
『おう』
「...え、なんで、」
『クソつまらんかった』
「.............。」
『なに、来たらあかんの?』
「...や、」
靴を脱いで章ちゃんが部屋へ入って行った。勝手にソファーに座り、勝手に飲みかけのビールに口をつけて私を見る。
『一人で飲むことあんねや』
「...まぁ」
『つまらんから?』
「え?」
『俺が居らんでつまらんかったん?』
無邪気な笑顔でそんなことを聞いてくる酔っ払いを見て、本当に小悪魔だなと感心する。恥ずかしげもなくよく聞けるなぁ。
章ちゃんがソファーに座ったまま手を広げているのを横目で見ると、腰を上げてなかなか動かない私の手を掴み引き寄せる。ソファーに座らされるとすぐにキスをして舌を絡めながら押し倒された。
『なんで何も言わんと帰るん』
「......忘れた」
『忘れるとかありえへんやん』
「忘れたの」
『...へぇ』
再びキスが落とされて、章ちゃんの手が服の中に入ってブラのホックを外したから肩を押す。
『なに』
「...え、するの、?」
『ん。するの』
「...え、ちょっと、」
明日、朝からバーベキューでしょ?
シたらすぐ帰るってこと?ヤりたいから家に寄ったの?なんかそれ、ひどくない?
『...そういう気分ちゃうの?』
「..........、」
『ほんなら、丁寧に愛撫したらなあかんなぁ』
そう言って笑った章ちゃんの笑顔は、やっぱりみんなに向ける笑顔とは少し違う。けれど、例えヤりたいから来たんだとしても、飲み会で一緒だった適当な女じゃなく私のところへ来てくれたことに安堵せずにはいられない。
付き合っているのにそんなことを考えるなんて、本当に私はつくづく章ちゃんに弱いんだ。
「...ちょ、っ、もう、...いいっ、」
『あかんやろ。まだイってへんやん』
イかせてくれないの、誰よ。
さっきからずっと私の中にある章ちゃんの指に、緩急をつけて掻き回され翻弄されている。イきそうになれば速度を落として焦れったく動き、暫くするとまた奥を突いて感じる場所を擦り上げる。恥ずかしいけれど、腰が浮いてしまう程に欲しているのに。
『なぁ、気持ち良くない?今日はイけへんなぁ』
わかってるくせに本当に意地悪。
小刻みに揺れる身体に時折キスを落としながら、章ちゃんが秘部を見つめてから私に視線をよこして笑う。羞恥心を煽るのも本当に上手いと思う。
『もう挿れていい?』
早く、なんて言えないから、訴えるように何度か頷くと、何だか楽しそうに笑ってからキスをして舌を絡めて私の足の間に入った。思わず縋りつくように背中に手を回すと、口の端を上げてゆっくりと埋め込んだ。
ぞくぞくして鳥肌が立つような快感に息が詰まる。
『今日、むっちゃ熱いな。中。なんでやろ』
言いながら腰を揺らし始めてすぐに、急に動きを早めて奥を何度も突き上げた。声を上げる余裕もないほどすぐに上り詰めて、身体が波打つ。
少しだけ、ほんの少しの間だけ動きを止めた章ちゃんが、今度は腰を押し付けるように奥深くを抉るから、達したばかりの身体が強すぎる快感にびくりと揺れ、逃れようと身を捩る。
『どうしたん?逃げんなや、っ』
わかってるくせに、気付かない振りとかしないでよ。
押さえ付けるように抱き締めて尚も奥を抉るから、すぐにまた絶頂の波が押し寄せる。
中が収縮すると同時に動きを止めた章ちゃんが、痙攣するように何度も小さく跳ねる身体と私の顔を見つめてから、啄むようなキスを繰り返す。
『めっちゃいい顔してたで』
睨むように視線を送って顔を背けた私を見て、体を起こしながらふっと笑った章ちゃんが律動を再開させる。
さっきよりもゆっくりと、味わうように目を閉じて私を感じる章ちゃんが物凄く妖艶で快感を煽る。
目を開けて私を見下ろすと、また薄笑いを浮かべて章ちゃんが言った。
『これじゃ足りひん?』
首を横に振るけれど、章ちゃんは笑うだけだ。時折甘い吐息を漏らして私の体に手を這わせ、見つめる。
『このままイかなくてもええなぁ』
「...それ、聞き飽きた、っ」
『ふふっ』
「最後までするくせにっ、」
『当たり前やろ。イかんで終われるか』
太腿を這っていた章ちゃんの手が体を滑って腰を掴んだ。引き寄せるようにしながらいきなり激しい律動が始まって声が漏れる。私を見つめながら動きを変えて様子を見て、私が顔を歪めると満足そうに口の端を上げる。
『#name1#の方が、物足りんって顔、っしてるやん、っ』
首を横に振って章ちゃんの手を掴んだら、ますます深く奥を突き上げる。仰け反った私の首筋に歯を立て舌を這わせて、そこに掛かる徐々に荒くなる章ちゃんの呼吸が更に私を追い詰める。
唇を噛んで顔を歪めた章ちゃんが、噛み付くようにキスをして熱い吐息を漏らした。
『...あー、あかんっ、...イきそ、』
いつもそんなこと言って、全然イかないくせに。もう、早く。
揺さぶられ続けた身体はひどく敏感で、ほんの少しの強い刺激でいつでも達してしまいそうなくらいギリギリなのに。
『ちょっと、っ...まだ、...イったらあかんで、っ』
口元に笑みを浮かべて私の足を抱え上げ、ぐっと奥に突き刺す。首を横に振るけれど、構わず打ち付けるから思わず背中に爪を立てると章ちゃんの顔が歪んで思い切り突き上げた。
すぐにびくりと跳ね達した身体を押さえ付け、章ちゃんが震えるみたいに緩やかに腰を揺らして溜息混じりに小さく声を漏らした。
唇に軽くキスを落とされて、荒い呼吸を整えるように目を閉じたら、いつの間にか眠っていた。
部屋が暗い。すぐに目に入った壁掛け時計は3時を回ったところだ。私の胸元に顔を埋めて眠る章ちゃんも裸のままで。
...帰らなかったんだ。
少し安心している自分に苦笑いが漏れる。ただのつまらない嫉妬だ。こうしているだけで十分満たされてしまう。
起こしてしまわないようにそっと背中に腕を回して抱き締めた。目を閉じたら胸元の章ちゃんが動いて、ますます顔をうずめるから幸せな気持ちで眠りについた。
携帯の着信音で目が覚めた。
ベッドの向こう側に散らばった章ちゃんの服の中から聞こえるその音で章ちゃんを揺り起こす。
すぐに着信音は止んで、俯せになってベッドに顔を埋めた章ちゃんが呻く。
『...なん、』
「...携帯、鳴ってたよ」
『...そんなんええよ、』
「...行かなくて、いいの、?」
『...どこに、』
「..............、」
『......えー、?...元々会う約束、してたやんなぁ、?』
何も言えなくなってしまった。
忘れてたわけじゃなかったんだ。忘れていたから約束したんだと思ったのに。
章ちゃんが顔を伏せたまま手探りで私の腰に腕を回して引き寄せた。バサリと布団を乱暴に被せられて、布団の中で章ちゃんがまた私の胸元に顔を埋める。
「...バーベキュー、いいの?」
『......なんで知ってんのぉ?』
布団を捲って顔を出し、ふっと笑った章ちゃんが私に問う。
『...あー、...だからなんも言わんと帰ったんや?』
「そうじゃないよ、」
うそ。本当はその通りだけれど、悔しいし恥ずかしいから、言わない。
『行かへん言うたら、なんでなんで?ってなるやん。だから行く言うた』
章ちゃんの言葉にかぶって再び着信音が響いた。溜息をついた章ちゃんが、私の頭を引き寄せ軽くキスを落として、ベッドから出て行く。
『...おはよぉ。...あ、ごめんなぁ。なんかな、頭痛してんねん、』
その声どこから出てるの?顔と声、全然合ってない。その冷めた顔で柔らかい声。対照的過ぎて苦笑いが漏れる。
『...せやから、今日はお休みしますー。...おん、大丈夫やって。...あ、ごめん!充電切れる!』
携帯の向こうで章ちゃんを呼ぶ女の子の声を遮って、章ちゃんが電話を切った。
また大きな溜息をついて、ベッドの枕元に携帯を放り投げベッドに入って来て私に抱きつく。
『...今日、何する?...もっかい、する?』
...また、電話をしていた人とは別人みたいだ。
朝特有の甘えた雰囲気は、いつまで経っても慣れることはない。普段とのギャップが有りすぎて、......可愛い。
「...しない」
『......したい』
「...しない」
『..........。』
「けど、...ちょっと嬉しかった」
章ちゃんが私を見て目を逸らした。
あ、照れてる。
『...何がやねん』
「...キスなら、したい、なぁ...」
ちらりと私を見てから、ぶつかるようにキスが始まった。
いつも章ちゃんには弱いと思っていたけれど、違うかもしれない。私だって、十分甘やかされているみたいだ。
「...ちょっ、!」
背中や腰を這っていた章ちゃんの手が、キスの途中で突然太腿に滑り、いきなり中に指を挿し込まれたから肩を押す。
『...我慢しよう思たけど、無理やった』
そんなのも聞き飽きた。
けれど、私に触れる章ちゃんの手が優しくて、いつも毒を吐くその唇も優しく触れて私を高めるから、結局いつも章ちゃんの思い通りだ。
『...はぁー...』
中の指をゆるゆると動かしながら、首筋を舐め上げてそこに顔を埋めた章ちゃんが溜息と一緒に声を発して、ふっと笑った。
「...なに、っ?」
『...ヤキモチ、かわい』
「...ヤキモチじゃ、」
反論の声は、中を掻き回されて詰まってしまった。面白がるような意地悪な笑顔が私を見つめて、優しく髪を撫でる。悔しいけど、やっぱりこんなところも好きで仕方ない。
指を抜いて足の間に入った章ちゃんが、キスをしながらゆっくりと埋めていく。奥に届いていつもよりもゆっくりとした律動が始まると、唇が離れたから目を開けた。真顔で私を見る章ちゃんにどうしたの、と問い掛けようと口を開いたところに、再び着信音が響く。ちらりと携帯に目を向けて章ちゃんが手を伸ばす。繋がったまま、しーっ、と人差し指を立てて通話ボタンを押した。
『...おん。あ、それやねんけど、...飲み会も、今日やっぱパス』
携帯から漏れる錦戸くんの声に、少しドキドキしていた。
私に視線をよこして軽く腰を揺らしながら章ちゃんが笑う。
『ちゃうよ。頭痛は嘘やねんけど。やっぱ今日は、...彼女の日』
電話を切ってまた放り投げた章ちゃんを見ていると、視線に気付いてさっきみたいにじっと私を見つめる。
嬉しい。ちょっと感動した。
『...気持ちいな』
「...章ちゃ」
『なぁ』
「...ん、」
『今日も、泊まるわ』
「...ん、あ」
キスをされて飲み込んだありがとうの言葉の代わりに、章ちゃんの背中を抱き締めた。いつも言わせてくれない。きっと恥ずかしいんだと思う。けど、よくわかった。
意地悪されても毒を吐かれても、やっぱり私は誰よりも愛されてるみたいだ。
End.
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