POPSTALKER!!3
お風呂から出て脱衣室で部屋着に袖を通すと、リビングの方で扉を閉める音がしたからドキリとして動きを止め、耳を澄ます。すると聞こえてきたのは、聞き覚えのあるいつもの鼻歌だったからほっとした。
...ほっとする、ってなんか変。本当は勝手に家に上がられていいはずがないのに。それでも泥棒や変質者じゃなく、章ちゃんだったことにやっぱり安堵する。
リビングのドアを開けると鼻歌は大きくなり、私に背を向けて座っていた章ちゃんが掲げたそれを見て慌てて駆け寄り、それを奪い取る。
「...ちょ、何してんの!」
奪い取ったブラを背中に隠して責めるけれど、章ちゃんは悪びれもなくにっこりと私に笑顔を向けた。
『洗濯物畳んでたぁ』
洗濯物の中にあったもう1枚のピンクのブラを両手で持ち上げ、またくるりとこちらを向いてニコニコと笑っている章ちゃん。そのブラをまたひったくって隠す。
「何広げてんの!」
私の赤くなった顔を見て章ちゃんが、ふふ、と笑い、今度はTシャツを手に取って畳み始める。
『ピンクのブラも可愛いなぁ思て見てた♡』
「...しなくていいから...」
大丈夫ー、と言ってスウェットからスカートまで慣れた手付きで畳んでいく章ちゃんに「そうじゃなくて、」と突っ込もうと思ったけれど諦めた。強く言うことが出来ない私が悪いんだけど、章ちゃんは私の注意を聞き入れてはくれない。というか、そもそも自分がしている事を悪い事だと思っていないんだから。
『黒が好きなん?』
「...え、?」
『クローゼットの中の下着も、黒ばっかやったし』
...勝手に開けたの?...見たの?
その言葉に絶句していると、今度は私のパンツを目の前に掲げてから私に視線を寄越す。
『今日のも黒やったもんな♡これと同じデザイン?』
...今日の...?私が、お風呂に入る時に洗濯機に入れたやつ...?
うん...同じなんだけど、そうなんだけど...私がお風呂にいる時に、見た、ってこと...?
目の高さに持ち上げたピンクのパンツを、首を傾けて不満気な顔で睨みつけている章ちゃんに恐る恐る声を掛ける。
「章ちゃ、」
『んー、でもなぁ?』
私の声に被るように章ちゃんが声を発して、私にそのパンツを広げて見せる。
『もうちょっとこう...大人なピンクとかのが似合うと思うで!』
章ちゃんが笑みを浮かべて差し出すパンツを、口を噤んだまま受け取る。
『今度俺が選んでプレゼントしたるな♡』
私に向けられたあまりに可愛らしいその笑顔につられて口の端は上がるけれど引き攣る。
...章ちゃんは本当にわかってない。だって章ちゃんがすることは、全部“私のため”なのだ。だから、これっぽっちも、...
『Dの75...♡』
これっぽっちも、悪気はない...はず...。
End.
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