Addicted to you
震える自分の手を握り締める。私に背を向ける信ちゃんに小さく“ごめん”と呟いて、寝室のドアノブに手を掛けた。
『ちょっと待てや』
「...だって、やっぱり...」
私の手首を掴んで止めた信ちゃんが手を引いてドアノブから私の手を離す。
見上げた信ちゃんが、あまりにも私を真っ直ぐに見つめるから戸惑う。
『...俺じゃあかんか?』
その言葉に思わず息を呑んだ。
...信ちゃんがよかった。信ちゃんと結婚したかった。どうして夫より先に出会わなかったんだろう。...と思っていた。
『お前の旦那の代わりにくらいなれんで』
...それを望んでいた。はずだった。
けれど、それは叶わない夢でしかなかった。私には、夢を見る勇気しかなかったから。
信ちゃんが私を思ってくれているなんて、知らなかったから。
昨夜、信ちゃんに抱かれるまでは。
「...でも、」
何もかも捨てるにはまだ迷いがあり過ぎる。
私から目を逸らすこともなく、ただじっと私を見据える信ちゃんに揺れる。 どうしたらいいのかわからない。
より強く私の手首を握った信ちゃんは、本気だ。
『無理やろ』
「...........、」
『もう戻られへんて』
昨夜の事実を消すことは出来ない。
一度だからいいわけではない。
けれど、繰り返してしまえば、全て失うことになる。信ちゃん以外、全て。
「........信ちゃん、」
『お前も、戻られへんようにしたるわ』
信ちゃんの唇がぶつかるように触れて、後ろのドアに体ごと押し付けられた。体を捩るけれど、密着した信ちゃんの体は私が逃げることを許さない。
噛み付くようなキスで塞がれ呼吸さえも奪われて、まだ迷いはあるはずなのに信ちゃんの背中に腕を回した。
End.
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