Addicted to you
いつもこの瞬間は切なくなる。玄関で靴を履いた私を後ろから抱き締める忠義は、私にぴったりとくっついて首筋に顔を埋めたまま動かない。
短い時間でも会えるだけいいと思ってここに来るけれど、帰る時間になればまだまだ時間が足りない、とどんどん我儘になってしまう。
『...別れられへんの? 』
私の首筋に当たる唇が紡いだ言葉にドキリとして言葉を失う。
そうすればもっと一緒にいられるけれど、私にそんな勇気はない。愛して欲しいと願ってはいても、現実に関係性を変えることにはまだ戸惑うことが多過ぎる。
『...それは、しゃあないなぁ...』
すぐに答えられないでいる私の考えを察したんだろう。それに、今までの私の態度を見ていたってわかるはずだ。
踏み込んでしまうのが怖くて、覚悟を決められなくて、忠義と体の関係は持っていない。
顔を上げた忠義の腕が緩んだから、腕時計で時間を確認して振り向いた。すると今度は、忠義に手を取られて両方の手をそれぞれ繋がれる。にっこりと笑った忠義に笑みを向けると、忠義が言った。
『...けど、俺は引けへんよ』
「...え?」
繋いだ手に目をやってその手に力を込めた忠義が、そこから目だけを私に向けて鋭い視線に貫かれた。いつもと違い過ぎるその表情にドクリと心臓が脈打つ。
『今更旦那んとこ返す気なんかないで』
手が離れて私の頭に触れた手に、ぐい、と引き寄せられると、忠義が顔を傾けた。
「...でも、っ」
言いかけた言葉はそのままキスに呑まれた。噛み付くように繰り返されるキスに忠義の苛立ちが含まれている気がして緊張が走る。背中を抱いていた手が急に腰の下に滑って厭らしく撫で始めたから、慌てて忠義の胸を押した。
『...してないからちゃう?』
「...え、何、...」
胸を押す私の手首を忠義が掴んだ。軋む程握られた手首を引かれ、思わず靴のまま玄関から部屋の中に一歩踏み出す。忠義の言う意味を理解し始め、全身に一気に熱が巡ってカッと熱くなった。
『...セックス。したら変わるて。大丈夫』
戸惑う私に笑顔を向ける忠義から目を逸らすと、手首を引いて抱き寄せられ、そのまま壁に押し付けられた。
私の足の間に割り込んで来た忠義の足。愛撫するように厭らしく太腿を撫でる手。
戸惑いながらも心のどこかで期待していたであろうその行為に抵抗を忘れた体は、されるがままに忠義の熱に侵される。
End.
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