Addicted to you
気だるさと疲労感に包まれた体をベッドから無理矢理起こす。このままうっかり眠ってしまったりしたら困るから。
隣で目を閉じている隆平を起こしてしまわないように、ゆっくりと静かに布団を捲る。
『どこ行くん』
ベッドの淵へ腰掛けたところで後ろから声を掛けられ口を噤んだ。
すると、ベッドに付いていた腕を掴まれ、軽く引かれる。こっちを向けと言われているみたいに。顔だけを後ろに向けて目をやれば、隆平が起き上がって私に両手を伸ばした。後ろから抱き締められて、肩に顎を乗せた隆平が耳元で囁く。
『...まさか、帰るとか言うてまう?』
こう言われることを全く予想していなかったわけではなかった。
愛されている最中は、やっと想いが届いた幸福感でいっぱいで、ただただ幸せで、何も見えてはいなかった。今までずっと密かに望んできた関係に漕ぎ着けたのだから。
けれど実際に体を重ねてみれば、罪悪感も戸惑いも生まれて、どうしようもない不安に襲われていた。
「...だって、」
『...旦那が心配なんやね』
笑っているようで、切な気にも聞こえる耳元の隆平の声に胸が苦しくなる。
今まで何となく二人で居るようになってからは、二人共夫の話は持ち出さなかったのに。
「...違うよ、」
言葉にしてみれば、それは何の説得力もない程に、小さく掠れていた。暫く私たちの間に静かな時間が流れて、何となく緊張してしまう。
肩に乗せられていた隆平の顔が離れて行ったと思ったら、首筋に顔が埋まって熱い溜息が吐き出された。
『...ここに居ってよ』
小さく呟かれた言葉に動揺する。
不安も戸惑いも確かにあるのに、今の言葉のせいで帰らなければいけないという絶対の気持ちが揺らいでしまう。家に帰れないという言い訳を探し始めた自分にますます戸惑いが膨らむ。
ぴったりとくっついていた体が少し離れると、体をずらして覗き込むように私を見た隆平に肩を押されベッドに押し付けられた。
「…隆平、」
『帰らせへん言うたら?』
私を見つめる強く真っ直ぐな瞳から目を逸らせずにいると、隆平が私の体に跨る。
『...離さへんよ』
「.............、」
『絶対、離したらへん』
言葉を封じるように塞がれた唇から、熱い吐息だけが漏れる。絡められた舌は優しいのに、体に這わされる隆平の手は荒々しく私を高めた。
まだ迷いは捨てきれないのに思わず隆平に手を伸ばすと、指を絡めて引き寄せられより深く体を重ねる。
End.
- 7 -
*前次#
ページ: