Addicted to you
章ちゃんの唇が水滴のついた首筋から何度もキスを落とし、時折舌を這わせながら胸元へと移る。背中から腰を緩やかに滑る指にぞくりと鳥肌が立った。
さっきまでの酔いはシャワーに当たったことで急激に醒め始めていた。2人シャワーに濡れ素肌に触れ、抱き締め合うこの状況が現実であるという事実に、次第に焦りを感じる。
何度目かわからないキスに唇が震えると、章ちゃんが唇を離して首を傾け、私を見つめる。
『寒い?』
首を小さく横に振れば、微笑んだ章ちゃんが少しシャワーの角度を変えて、包み込むように私を抱き締め、キスを落とした。愛撫するように絡み付く舌に鼓動が早くなる。
すると、腰にあった章ちゃんの手が這うように移動して、太腿を滑り既に潤った中心部に指が触れた。
「...待って、」
『...何』
思わずその手を掴んで止めると、章ちゃんが伺うように上目で私を見つめた。
「...やっぱり、」
不安そうな、切なげな表情を浮かべた章ちゃんを見て言葉が止まった。けれど、勢いでここまで来てしまったのは事実で、これ以上進めば戻れなくなってしまう。
私に、全てを捨てる勇気はあるんだろうか。
『...俺のこと、好きなんやろ?』
「...そうだけど、」
いつも、夫と章ちゃんを比べていた。
『旦那より、好きなんやろ?』
「.............、」
章ちゃんならもっと優しいのに。
章ちゃんならわかってくれるのに。
章ちゃんならこんなこと言わないのに。
いつも思っていた。
好きだった。多分ずっと。
章ちゃんの気持ちも、何となくわかっていた。
だから章ちゃんに頼ってしまった。自分が狡いのは分かっているけれど、章ちゃんの気持ちを利用した。愛してくれる人と一緒に居たかったから。
俯いた私を、首を傾け覗き込むように見つめてキスが落とされた。優しく触れて啄んで、言葉がなくても愛が伝わるような、そんなキス。
『...今日くらい、忘れてまえよ』
...でも、一度関係を持ってしまったら...。
揺れる心のせいでどんどん鼓動が早くなる。私を見つめる章ちゃんの目に答えを急かされているようで戸惑う。
どうしたらいいかわからない。
再び近付いてきた章ちゃんの唇から、思わず顔を逸した。
章ちゃんを愛してる。傷付けたいわけじゃない。...けれど怖い。その先にはどんな世界が待っているのかわからないから、怖い。
『...おい、...今更逃げんなや』
章ちゃんを見遣れば、傷付いたような顔をしていたからドクリと心臓が脈打った。髪をくしゃりと握り頭を押さえられ押し当てられた章ちゃんの唇。
「...章ちゃんっ、」
『逃がさへんよ』
睨むように私を見つめた瞳が揺れていた。章ちゃんの濡れた髪から滴り落ちる水滴と一緒に零れてしまいそうな涙から目が逸らせずにいると、ゆっくりと距離を詰めて、震える唇が私の唇を啄む。
キスをしながら私の中へ押し込まれた指を、あまりにもすんなりと受け入れてしまった自分の体に戸惑う。
悪いのは私だ。わかっているのに、泣く資格なんか私にはないのに。何度も降り注ぐ優しいキスを受け止めながら、快楽に漏れる声と共に涙が零れた。
End.
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