笑みに隠す独占欲
繋がる瞬間が、たまらなく好き。
彼の指や唇や舌で存分に溶かされた体に彼を受け入れる瞬間は、痺れるような快感で全てを忘れて彼だけを感じられるから。彼のことだけを考えられるから。
息を詰めてゆっくりと私の中へ入って、快感に歪む顔が好き。吐息に僅かに混じる快楽の声も、困ったように笑うその顔も愛しくてたまらない。全て私の物にしたくなる。
私の奥までぐっと全て埋め込んで、章大が私の上に体を倒した。微笑んで唇を合わせ、舌を徐々に深く絡ませながら手を取り、私の顔の横で指を絡める。すると絡めた指を解いて私の左手首を掴み、薬指の結婚指輪を抜き取った。悪戯っ子のように笑った章大は、手を伸ばし指輪をベッドの上の棚に置いてから、私の頬を両手で包んで柔らかくキスを落とし、見つめた。
『今は俺の』
目の前で笑って、頬から離れた手が私の手へ滑り、指を絡め直すと緩やかに律動を始めた。
独占欲のようなそれは、また私の心を甘く締め付け、媚薬になる。
探るように中を掻き回す章大は、快感に歪む私の表情を見て嬉しそうにキスを落とす。声が漏れるとまたそこを刺激し、私の体を味わいながら熱い吐息を吐き出す。
すると突然、章大が後ろを振り返ったから、章大の視線の先に目をやる。繋がったまま後ろに手を伸ばした章大の目が私に戻ってきて言った。
『...先輩』
章大の手に握られたバイブ音を発している彼の携帯の画面には、“着信”の文字と共に夫の名前が表示されていたからドキリとした。
一気に早くなった鼓動は、震え続ける携帯に急かされるようにますます早くなる。
やっと止んだバイブ音に、画面を見つめていた章大の目が私に向いて笑った。携帯をベッドの枕元に置くと繋がったままの腰を軽く揺らし、私の髪を撫でた。私の動揺をきっと感じ取っている章大は、肌に指を滑らせ、高めるように体を撫でながらキスを落とす。
するとまた私のすぐ横あたりで震え始めた携帯。息を飲んで章大を見つめると、携帯を手に取り、私に微笑んでから通話ボタンを押した。
そして、彼の耳元から僅かに漏れてくる、あの人の声。
『どうしたんすか』
いつもと変わらないトーンで話し始めた章大を、息を潜めて見つめていた。
『あー...飯...、今日もう約束してもうてて。すんません』
薄情だと言われて笑う章大は、私の腰を撫でながら艶を帯びた目で私を見下ろす。
『...奥さん、今日はいないんすね』
私の体に指を這わせ、視線もその先を辿る。ひくりと腰が揺れると章大が緩やかに律動するから、章大の手を掴んだ。
『あは、ほんますんません。また誘ってくださーい』
終話ボタンを押して携帯をまた枕元に置くと、私の顔を見てすぐに腰を掴み一気にスピードを上げて突き上げた。思わず仰け反った体をベッドに押し付けるようにして奥を抉るから、今まで頭と心にいっぱいになっていた動揺は隅に追いやられた。
彼を見上げれば視線が絡み、章大が口の端を持ち上げて笑う。手を伸ばすと章大が私の上に体を倒したからその背中を抱き締めた。唇を食むようにキスが落とされ、荒く熱い吐息を零した章大の唇が首筋に触れた。そこに甘く歯が立てられ、ぞくりと粟だった肌を章大の唇が食みながら吸い上げるような仕草を見せたからびくりと体が揺れた。
するとすぐに離れた唇が、私の唇を啄む。細められた章大の目が私を見て眉を下げて笑うから、胸がチクリと痛んだ。
拒んだよう思われてはいないだろうか。けれど本当に交わった証を残してしまえば、この関係に気付かれてしまうかもしれない。それでも切なげな顔をさせてしまったことに胸が苦しくなって、章大の頭を引き寄せて自分から唇を押し付けた。
『...来週も会えたらええな』
「...うん」
『あは、なんちゅう顔しとんねん』
私にとって会えない一週間は長い。旦那が帰宅してから翌朝家を出て行くまで、その時間すら長いと感じてしまうのだから。
『いつでも会える距離に居んねんから』
会える距離、とは言っても、簡単に会うことが出来ない関係なのは、お互いによくわかっている。
玄関のドアに手を掛けたまま唇が触れ、ドアに押し付けられた。グロスの甘い香りがふたりの唇の間で共有され、いつもより潤った唇が厭らしく音を立てた。
私の唇から色が移ったその唇を手の甲で拭って章大が笑う。
『ごめん、取れてもうたな』
私の唇からはみ出したグロスを章大の指が拭う。そして緩く抱き寄せて背中をポンポンと叩いて再び玄関のドアに手を掛けた。
『...行こか』
たまらなく寂しくなるこの瞬間に、今日は章大が私の手を取って握ってくれた。
遠回りしてなるべく人気のない薄暗い通りを手を繋いで俯いて歩く。手が離れるまでの数分間でする別れのための心の準備は、きっとこれから先もずっと切なく胸を締め付けるんだろう。
けれど切なくても苦しくても、続けられるのなら、それだけで幸せなのだから。
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