乙女心より厄介な男心
屋上から直行した職員室で亮ちゃんの嘘を知った。どうせ一人になりたかったとか女の子が来るとか、そんな感じで追い出されたんだろう。まぁ、こんな扱いはいつもの事やし。
教室に戻る途中、信ちゃんが女の子と立っているのが見えて思わず足を止めた。
雰囲気的に...告白、かもしれない。
廊下の端に立つ女の子は俺に背を向けているから、柱から半分顔を出して覗く。体も半分出して、覗く。
信ちゃんが気付かないわけもなく面倒臭そうな顔をして手で追い払う仕草をされた。
信ちゃんはガサツだけど、肝心な時程鈍感だけれど、距離を詰めるのが上手いからモテる。
けどアレやな。今信ちゃんの目の前の子は、あんまり信ちゃんが好きそうなタイプちゃうなぁ...。
ふと横を見れば、足を止めて信ちゃんを見ている女の子。すぐに顔を逸らしその場を後にしたその子の表情が、何だか物凄く気になってしまった。
...綺麗な子やった。信ちゃんが好きそうな顔立ちの。こういう勘はええ方やと思う。あの子、信ちゃんの事が好きなんやな。
信ちゃんに視線を戻すと、もう二人の姿は見当たらない。するとすぐに視界が真っ暗になったから驚いた。
「丸ちゃん」
俺の目を覆うひんやりとした手と、愛しい声。その手を掴んで振り返れば、ひょこっと顔を出した愛しい笑顔。
「何してんの?怪しいよ」
掴んだ手にぎゅっと力を込めると、#name1#が「痛、」と顔を歪める。ふふ、と笑って手を離せば、#name1#も笑いながら俺の背中をパシリと小さな手が叩いた。
触れる度に苦しくなる。俺を見ていないその目で俺に笑いかけて俺に触れるその冷たい手は、いつだって無自覚で苛立つ。
「今日さ、...どっか寄ってかない?」
『んー、どこ?』
「んー...相談があるから...あんまり煩くないとこ」
俯いて浮かべた笑みの裏で、誰を想ってんねん。
『...あー、ごめん。今日はやっぱ無理やわ。章ちゃんと約束してた』
お前の好きな誰かの相談を聞いてやるには、休養も必要やねん。胸の痛みは日に日に強くなるから、今日は許してや。いつも元気な頼れる丸ちゃんに映らんと困るからな。
そっか、と俯いた寂しそうな笑顔にまた胸が痛む。自分の回復のために断ったはずなのに、すでに後悔。
あー、もう。なんやねん。お前のその顔、勘違いしてまいそうになる。
手を振って俺に向けた背中を見送りながら溜息をついた。さっき捕まえた冷たい手の感触を思い出すと、やっぱり苦しい。けどドキドキしてしまう。男心って複雑。
...あ、章ちゃん。章ちゃん教室に居るやん。#name1#と章ちゃん喋ったらバレるやん...!
複雑な男心を振り切るように後ろから#name1#を猛ダッシュで追い掛けた。
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