近距離なのに遠距離
苛立つヒナを連れて教室に入ると、クラスメイトの女の子に当たり散らすヒナを宥めて離れた。
見てる限りあの子の事が好きなくせに、気付いていないのか隠そうとしているのかわからないけれど、ヒナの態度に呆れる。毎回毎回あの子に突っかかって暴言を吐いてみたり。小学生ちゃうねんぞ。いい加減気付けや。
...なんて、人のことばかり言っている場合ではない。
窓際に立って手摺に凭れ、ヒナとあの子のことを見ていたら、知らないうちに隣に#name1#が立っていたからドキリとした。
「...村上くん、どしたの?」
俺の耳元に唇を寄せる#name1#は、無意識に距離が近いからいつも動揺してしまう。
『...腹減ってイライラしてるんちゃうの』
「嘘だー」
ヒナを見つめる#name1#を横目で盗み見て、顔色を伺っていた。
“ 好きな人がいるんだけど、”
...ヒナ、ではないか。ちゃうな。興味示してへんし、ちゃうわ。
あの日、その衝撃的な言葉を聞いてから、#name1#の視線ばかり追っている自分がいる。相手を知ってどうなることでもないし、むしろ苦しくなるのはわかっているのに、探りたくなってしまう。
「あは、すごい。ほっぺた。女の子?」
『おん、すごい音やったわ』
「...フったんだ?」
その言葉が気になって彼女の表情をまた伺う。ヒナがあの子から受け取ったスポーツドリンクを逆さにして喉に流し込む様子を見ていた#name1#の目がふっと俺に向いたから慌てて顔を逸らした。
『...おん』
「モテるもんね。村上くん」
一気にわからなくなる。疑えば疑う程、その心を見る目は鈍って、結局わからない。だから知らなくていい、探らなくていいと思っているのに、いつの間にか彼女の視線を追ってしまう。
「...ヨコも、モテるよね」
不意打ちのお世辞は心臓に悪い。顔がカッと熱くなる気がしてくるりと向きを変え、窓の外へと視線を移す。
『...何言うとんねん』
「モテるよ、ヨコは」
『そんなん言うてもなんも出ませんー』
照れ隠しにわざとおどけた口調で言えば、#name1#が笑った。
...なんやねん、ほんま。お前のせいで振り回されてばっかしやんけ。
無邪気に笑う横顔を密かに睨み付けて、気持ちを落ち着かせるようにまた窓の外へ視線を向けた。
その先の中庭のベンチに大倉の姿を見つけて眺めた。隣に座る女の子の方を向いて、片足をベンチに乗り上げて座る大倉が、女の子の頭に手を置いたのを見て溜息を吐く。
...この前彼女居れへん言うてたくせに、なんやねんあいつ。嘘つきやんけ。...羨ましい。
もう一度大きく溜息を漏らせば、隣の#name1#が俺を覗き込んで来たから、やっぱり知りたくないと思い直した。
知らんでええねん。これ以上嫉妬なんて、かっこ悪いだけや。
恋人に一番遠い“一番仲の良い男友達”。けど、“一番近い男”の座は、今はとりあえず俺やねんから。
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