私の中の大きなあなた
あれから、ヤスとは何度か会っていた。食事だったり、ショッピングだったり、二人だけで。
ヤスは昔と一緒で優しかった。毒を吐くこともあるけれど、それでも私を気遣ってくれるさり気ない優しさはいつも伝わっていた。
それを感じる度に、友達以上の想いが大きくなるのを実感する。
後悔や罪悪感なんかではなく、もう完全に、ヤスのことが好きになっていた。
最初にご飯を食べた日から、恋愛の話をお互いに何となく避けていた。彼女がいないのは知っている。けれど、モテるであろうヤスの恋愛を知るのが怖かった。
それでも、二人で居るときは気にせずにいられた。嬉しい感情の方が勝っていたから。
今日の全ての講義が終わり、明日のヤスとの食事に来て行く服を買いに行こうか、なんて考えていると、友達の沙紀が私に声を掛けた。
『今日さ、合コン行かない?今日はいい面子っぽいんだけど!』
ヤスと再会してからずっと合コンは断ってきたから、沙紀もあんまり期待はしていない様子で聞く。
「んー、ごめん。いいや」
『だと思った!...好きな人でも出来た?』
茶化すように笑いながら聞いてくる沙紀に笑って曖昧に答えるけれど、それを見透かしたように沙紀が言った。
『まぁ、恋してるなら早めに動かなきゃね。誰かに取られる前に!』
...わかってる。わかってるけど。
またヤスを失うことを考えると、怖くて堪らなかった。あの日の光景を思い浮かべ、あの子を自分と重ねてしまう。
ヤスは私のことをどう思っているんだろう。
少しでも先に進みたいと思う自分と、このまま今の関係でいられた方がいいかもしれないと思う自分がいる。
でも、ヤスに彼女が出来たらなんて考えると、もう今みたいに会うことは出来なくなる。それなら進むしかない。
そして私は、ヤスに恋愛話を持ち掛けてみる決意をした。
ヤスと買い物をした時に、可愛いと言っていたヤス好みの服を思い出しながら、服を選んでみる。すべてがヤスを中心に回っている、完全に恋する乙女な自分に苦笑いが漏れる。
ショップから出ると、あたりはもう暗くなっていて、足早に家路につく。
と、私の少し先に、今はもう見慣れた派手な服を見つけた。ヤスだ。
ヤスは女の子と一緒だった。
長いストレートな髪が綺麗な華奢な女の子だった。ヤスは壁にもたれ掛かり、女の子に顔を近付ける。仲が良さそうな二人を見つめたまま、息をするのも忘れた。
次の瞬間ヤスの首に女の子の手が回りキスをした。
私の耳は音が遮断されたように何も聞こえず、ただ、その光景だけがスローモーションのように流れていった。
どうやって帰ったのかは覚えていない。気付いたらベッドの上だった。
もう何も考えないように深く息をついて目を閉じた。
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