euphoria


裏に隠したその顔は


ヤスは今、私の短大の近くにある大学に通っていた。実家を出て、大学の近くで一人暮らしをしているんだそうだ。

『なんや変な感じ。#name1#すげぇ大人んなってんのに、中身変わってへんもん』
「ちょっとなんかそれ失礼じゃない?喧嘩売ってんの?」
『違うわ!これでも褒めてんねん!』

昔のようなノリに思わず笑顔が溢れる。ヤスも同じ。大人になってるけど、変わってない。でもたまに見せる男っぽい表情に目を奪われる。

『でな、秋山おったやん?あいつもう子供おんねんて!』
「そうなの?...なんかすごいね。結婚なんてまだ想像つかない」
『そうなん?#name1#は彼氏おれへんの?』
「うん」
『...でも#name1#モテそうやん』
「それならヤスだってさっき...」

しまったと思った。さっきの話題は避けようと思ってたのに。途中で口を噤んだ私に、ヤスはちら、と目を向けた。

『...#name#さ、さっき...聞いてたんやろ?』

聞いていたというか...それはどういう意味なんだろう。なんて言えばいいんだろう。
沈黙になってしまって、何か言わなきゃと焦った。

「私は...」
『そんなん言われても困るわなぁ!そらそうやな!』

そう笑ったヤスに何と返していいか分からず、曖昧に笑い返した。
ヤスは俯いて、何だか不自然な笑みを浮かべていた。



...もうすぐ0時。あっという間だった。

「そろそろ、帰らなきゃ」
『そうやな。ちょっとそのまえにトイレ!』

トイレに立ったヤスを見送ると、一つ溜息をもらした。
なんだか、ヤスの表情が最初と変わった気がする。笑い方もなんか違う。それが何かはわからないけれど。

『お待たせ!出よ』

戻ってきたヤスの後について行くと、店員のありがとうございましたという声に送り出され店を出た。

「え、お金...」
『ええねん。俺が誘ったんやし』

さっきのトイレの時だ。会計を済ませてくれていたんだ。本当に大人の男なんだなぁ、なんて思ってしまった。

「ありがとう!ごちそうさまでした!」

深々と頭を下げる私を見て、ヤスが笑う。

『そんなんしてくれたら奢り甲斐あるわ!』
「またおねがいします!」

私の言葉に、ヤスはすごく驚いた顔をしていた。また奢れって冗談、通じなかった?
ヤスの表情が不思議で、どうしたの?と問い掛けた。

『...また誘ってもええの?』

思わず笑ってしまった。

「当たり前じゃん!なんで今更そんなこと聞くの?あ、奢ってくれなくていいからね」
『...いや、そうか...ん、ありがとぉ』

また、一瞬変な感じの顔をしていた。でもありがとう、と言った彼の顔は紛れもなく私の好きな笑顔だったから、 少しだけ安堵していた。




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