思い出すのはいつも
『#name1#ー!今日こそは気分転換に行こ!』
沙紀には、少し話を聞いてもらった。途中まで話したところで
『辛かったね』
と言って一緒に泣いてくれた。嬉しかった。
高校から本気の恋愛をして来なかった私は、恋愛の相談なんて友達にしたのは初めてだったのだから。
「じゃあ、一次会だけ!」
『んー...。ま、いっか!久々にノってくれたんだし』
沙紀に肩を組まれ笑う。
笑えなくなったわけじゃないから、私はまだ大丈夫。信用出来る友達は、いる。
『『『かんぱーい!!!!』』』
こんな雰囲気は久し振りだった。
仲のいい友達と、面白い男の子たち。当たり障りのない会話だけど、それなりに楽しかった。
沙紀がたまにこっちを見てアイコンタクトを取るのも、心配してくれているみたいで嬉しかった。
気分転換は十分に出来た。
メイクを直そうと、バッグを持ってトイレに入った。トイレで鏡を見ると、あの日のことを思い出したから慌てて鏡の中の自分から目を逸らした。
トイレから出ると、隣りに座っていた賢治くんが壁にもたれて立っていた。
私に気付き笑顔で近付くと、私の手首を握り歩き出した。
その背中に「どうしたの?」と問いかけると、店の外に出るから驚いて腕を引いた。けれどその腕は掴まれたまま、外に出たところで振り返った。
『一緒に抜け出そうよ。二人で飲み直そ』
「ごめん。私ね、一次会だけって約束で来たから、もう帰らなきゃ」
『ちょっとだけだって』
眉間に皺を寄せたケンジくんがまた私の左手を引く。
ヤスとは違うその強引さに、じわりと恐怖感が湧く。
「...ちょっと、離して、」
『行ってくれるなら離すよ』
「でも私...」
『そんなんだから彼氏出来ないんじゃね?もっと臨機応変に行こうぜ』
手首を掴まれたまま肩を抱かれて抱き込まれたから、思わず震えた。
どうしよう。怖くて声が出せない。
『何してはるんですか?嫌がってるんちゃいます?』
後ろで声がした。
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