その優しさに絆される
振り向くと、賢治くんを睨み付けるその目が一瞬私を捉えて、再び賢治くんに戻った。
『離したってくれませんかね?怖がってるし』
『関係ねぇだろ』
『代わりに俺が付き合いましょか?』
怪訝な顔で睨み付ける賢治くんが、やっと私を解放したから後退り、少し距離を取る。
『こいつと知り合い?』
『そうなんすよ。だから許したってくださいよ』
『だからおめぇに関係ねぇだろ』
『お、相手になりましょか?俺ね、喧嘩はあかんけど、走るのとか得意なんすよ。勝負してみます?』
「...頭おかしいんじゃねぇの?めんどくせぇ」
舌打ちをした賢治くんは、店に戻らず街の中へ消えて行った。その後姿を見ながら、掴まれていた手首を摩った。
『完勝やな』
「...丸ちゃん、」
丸ちゃんが私に笑みを向け頭をぽん、と撫でる。会うのは同窓会以来だ。
『店入ろ思たら、丁度#name1#ちゃん出てきてん。急にあんなんされたら怖いよなぁ?大丈夫やった?』
小さく頷いて、ありがとう、と呟けば、丸ちゃんは困ったような笑みを浮かべて私を見ていた。
『あんさ、#name1#ちゃん。ちょっと聞きたいことあんねん。今度時間もらえへん?』
「いいけど...今は出来ない話?あ、ごめん、丸ちゃんも予定あるよね」
『え、俺は一人やからええけど...#name1#ちゃんさっき帰る言うてたから』
「あ、そっか。大丈夫だよ。予定があるわけじゃないんだ。丸ちゃんが大丈夫なら...」
『ほんま?じゃあおねがいします』
今あったことを簡単に沙紀にメールをして、すぐに返信が来たからそのまま店を後にした。
丸ちゃんと一緒に来たのは、あの日に来た、ヤスとキスをした、あの店だった。それだけで鼓動が早くなる。あの日のことを思うと、落ち着かない。
『個室やけど手は出さへんから安心してな』
「大丈夫だよ。丸ちゃんだもん」
『んじゃ、かんぱーい!』
ビールを一気に半分くらい飲んだ丸ちゃんは、ジョッキを置くとテーブルの上を見つめた。
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