遠過ぎる心の距離
成人式 当日は、近年では珍しい大雪に見舞われた。私と佑香は自前の着物のことも考え、成人式を断念。同窓会のみの出席を決めた。
時間が近づくにつれ、私の心臓は早鐘を打ち、何をしていても落ち着かなくなっていた。ただただ、鏡の前の自分を何度も何度も確認する。
そこに佑香からのメールが届いた。
“雪でバスが進まない...先に店入ってて”
それを見ればさらに心臓は激しく音を立てる。
佑香が来るまで待っていようかとも思ったけれど、雪が降り続ける中外で待機する訳にもいかず、渋々会場へと向かった。
会場となっているダイニングバーの前で足が竦む。何とか足を動かそうとして息を大きく吸い込んだ途端、肩に手が置かれ、びくりとして振り返る。
『#name1#ちゃんやろ?ひっさびさやん!めっちゃ綺麗なっててびっくりしたー!』
同級生の丸ちゃんだった。
屈託のない丸ちゃんの笑顔を見たら、少し心が解されたような気がした。
『入ろ!もうみんな来てるんちゃう?』
丸ちゃんに背中を押されて、一緒に店に入る。丸ちゃんがいてくれてよかった。勢いをつけてくれて本当に助かった。
店に入って意を決して顔を上げると、中には懐かしい顔ぶれがたくさん集まっていた。
『丸ちゃんと#name1#ちゃん参りましたー!』
丸ちゃんの声で、肩を組まれた私と丸ちゃんに店内の視線が集中する。
集まってくる友人達と挨拶を交わしながらも、忙しなく視線を動かした。
そして、店の奥のカウンターに、その姿を見付けた。あの頃より少し髪が伸びて、落ち着いた髪の色で、少し男っぽくなった大好きな笑顔を。
少し落ち着いていた心臓が、またドクンと大きく音を立てる。
『章ちゃーん!』
丸ちゃんの声に、ヤスの視線が動いてこちらを見た。一瞬、驚くような表情をしたヤスは、すぐに笑みを浮かべ返答する。
『おう!マルー!』
どうしよう、ヤスが来る。
丸ちゃんに肩を組まれたままで動けないでいた私のもとにヤスがやって来た。
どうしよう。緊張で眩暈がする。
...会えたんだ、ヤスに。
『章ちゃん!#name1#ちゃんやで!めっちゃ綺麗んなってへん?』
丸ちゃんの言葉がまるで他人事のように遠くに聞こえる。
『...久しぶりやん』
すごく淡々としていた。口元にだけ笑みを浮かべたヤスは、私の目を見ない。
「...久しぶり、だね」
私もただ、短く返すことしか出来なかった。たった一言で、二人の間の溝の深さを痛感することになった。
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