行き場をなくした想い
『#name1#ー!遅れてごめんねー!』
佑香に後ろから腕を組まれ、我に返る。久しぶりだねーと話し出した佑香へと体ごと振り返ると、丸ちゃんとヤスは場所を移動した。
正直、それに少し安堵していた。
やっぱり、そうだよね。あの頃のように戻っているかも、なんて、そんなに都合のいいことがあるわけない。それは仕方のないこと。
そうは思っていても、私の目はヤスの姿ばかりを追ってしまって、友人たちの話は全く頭に入って来なかった。
本当に昔から、私の世界はヤスを中心に回っている。
ずっと、謝りたかった。
恋をしていないという意味の“好きじゃない”だったとしても、あんな言い方をされたら誰だって気分が悪いはず。
だからこそヤスは、私を避けていたんだろうし。
けれど、謝ることは私の自己満足に過ぎず、私の気が楽になるだけだろうか。...そうだとしても、どうしても伝えたいと思っていた。
でも、今その気持ちも揺るぎ始めている。拒絶されることが、何より私の恐怖感を煽っていた。
『二次会行く人ー!』
幹事の言葉に、ふっと息を吐き出した。
もう、おしまい。
私は友人たちに断りを入れ、帰り支度を始めた。えー帰っちゃうのー、なんて言っている友人たちも、二次会への期待で、言うほど私が帰ることを残念には思っていないだろう。
同じ方向へ一緒に帰る人を探したり、連絡先を交換したり、みんなが思い思いに動く中、私はただその光景を他人事のようにぼんやりと見つめていた。
頭の中は、ヤス。ヤスのことばかり。
店のドアの前に丸ちゃんを見付けたけれど、隣りにヤスの姿は見えなかった。 もう、帰ってしまったのかもしれない。
ただ一言、ごめんと謝ることが出来たのならどれほど楽だっただろう。私の想いがある限り、楽にはならなのだろうか。
私は友人たちに軽く挨拶し、逃げるように喧騒から離れた。胸がチクチクと痛むのは、謝ることが出来なかったからだろうか。それとも、ヤスが私を見てくれなかったからか。
けれど、胸の痛みの正体を考えていても、ヤスと話すことは出来ないし、もうそんなことはどうでもいい。結局また私は、ヤスに会わないうちにこうして逃げ帰ったのだから。
星ひとつ見えない暗い空に、ますます気分を落とされる。期待なんてしていなかったけれど、想像通り過ぎて笑える。
あの卒業式の日、一人で歩いた帰り道と同じ気持ちだった。一人空を見上げて、溢れそうな涙を耐えた。
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