もう一度チャンスを
『#name1#―!はよ帰ろうやー!』
「うん!待ってー」
『今日買い物行かへん?新しい古着屋がな...』
けたたましく鳴り響く目覚ましを恨めしく思った。
幸せな夢だった。ヤスと一緒の中学時代の夢。朝からくすぐったいような気持ちになったと同時に、昨日の出来事もまさか夢だったのではないかと、慌てて携帯を開く。そこには、ヤスの電話番号が登録されていた。
...夢じゃなかった。安堵の溜息が漏れた。
『もう一回さ、やり直さへん?友達。また一緒に買い物行ったり、しようや』
ヤスの言葉に、私は迷わず頷いた。そして、よろしくお願いしますと付け加えた。
まるで交際スタートみたいだけど、そうじゃない。“友達”をやり直すため。私には、それで十分だった。なんなら恋が実ったくらいに嬉しかったのだから。
『こちらこそ、よろしくお願いしますー』
同じように頭を下げたヤスは、あの頃のような子供っぽい無邪気な笑顔で笑っていた。
思い返していると、メッセージの受信を告げる音が鳴る。携帯を開くと、ポップアップにヤスからのメッセージが表示されていた。
昨日はありがとう、と、食事のお誘い。一気にテンションが上がったけれど、悔しいからすぐには返信しない。じっくり言葉を選んで返信しよう。
なんだか、中学生の頃に戻ったような気持ちになっていた。
通学の電車の中、ヤスに返事を打つ。嬉しくてたまらない。またこんな風に話せるなんて。緩みそうになる口元を掌で隠し、メッセージを送信した。
もうこうなると、ずっとヤスのことばかり考えていた。
離れていた間のヤスのことも、今どうしているのかも、たくさん知りたかった。早く話したくて堪らなかった。
講義の途中、震える携帯に気付いてポケットから急いで取り出した。
ヤスからのメッセージに鼓動が少し早く動き出した。
“じゃあ、明日の19時に駅前な”
携帯を握り締めて、何度も読み返す。
どんな服を着よう。
どんな髪型にしよう。
今日の帰宅後に、一人ファッションショーの開催を決めた。
当日の夕方、短大の講義が終わると急いで家に帰る。
シャワーを浴びて髪をセットして、濃くなりすぎないように念入りにメイクする。
昨日の夜は、パックをした。
ネイルも綺麗に塗った。
もう完全にヤスを友達以上に見てしまっている自分に苦笑いが漏れる。友達をやり直せるだけで、と思っていたはずなのに、本当に貪欲で困る。
それでも嬉しいものは嬉しいのだからしょうがないと、少し開き直っていた。
- 7 -
*前次#
ページ: