euphoria


ザワザワする心臓


約束の時間よりも30分も早く、待ち合わせ場所に着いてしまった。家にいてもソワソワと落ち着かなかったのだから、しょうがない。
待ち合わせ場所が見える喫茶店に入って、ヤスを待つことにした。ネイルや、メイクをチェックしながら、深呼吸のような溜息を何度も吐いた。

ふと待ち合わせ場所を見ると、ヤスの姿があった。私服でいるところなんて、中学生以来だからドキドキしてしまう。
壁にもたれて携帯を弄っているヤスを、このままもう少しだけ見ていたかった。ヤスを目の前にしたら、こんな風に眺めているわけにはいかないから。
携帯を耳に当てているヤスの笑顔に見とれてしまう。...本当、かっこよくなった。

ヤスが電話を切ったから、待ち合わせ場所に向かおうと席を立つ。店を出て歩き出すと、ヤスが手を振った。私ではない誰かに。
思わず足を止めると、一人の女の子がヤスの前に立った。

ヤスの友達らしいその子とヤスは、笑顔で会話を交わしている。次の瞬間、ヤスの表情が一変する。笑みが消え、急に目を丸くしたヤスは、視線を落とし女の子に頭を下げる。俯く二人。女の子を心配そうにちらりと見つめるヤスに、二人がどんな会話をしていたのか、すぐに想像がついた。

きっと、告白されてた。

ぎこちない笑みを浮かべ頷いた女の子が、こちらに走ってきた。
...あ、やばい。と思ったときにはもうぶつかっていた。すみません、と私に頭を下げた女の子は、私よりも遥かに可愛くて、目には涙を浮かべていた。

ヤスの方を見ると、驚いた顔でこちらを見ていた。
ゆっくりと歩み寄ると、ヤスは苦笑いして俯いた。

『...見てたん?』
「...少し、ね」

...あー私へこんでる。

ヤスは、最初こそ少し気まずそうにしてたものの、昔と変わらずよく話してくれた。
でも私の頭の中は、さっきの光景が何度も何度も繰り返し再生されていた。

『#name1#』
「あ、なに?」
『だからー、俺知ってる店あんねんけど、そこでええ?』
「あ、うん。まかせる。楽しみだな」
『.........。』

ヤスについて行くと、すごくお洒落なお店に入った。暗めの照明に落ち着いた雰囲気で、洋楽が控えめに流れていた。半個室に通され座ると、向かいに座ったヤスが何とも言えない表情で私を見ていた。

「すっごいいいお店だね。こういう雰囲気好き」

自らの気持ちを上げるためにわざと明るめに言った。ヤスは優しく笑みを浮かべて私を見た。

『せやろ?俺もこういう雰囲気好きやねん。そろそろ大人めな店も知っとかなあかんしな』

ヤスは知らない間に、なんて優しい顔をするようになったんだろう。見ていると、ん?と首を傾げるから、なんでもないと首を横に振って、メニューに視線を落とす。




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