euphoria


Unshakable Love


ピンポーン。
「あいてるー!」
『あいてるやなしに締めとけよ、アホ!』

玄関をくぐって鍵をロックし部屋に入ると、#name1#の隣に腰を下ろした。

「だって開けに行くのめんどいじゃん。寒いし」
『あいてるー!って、入ってきたん俺やなかったらどうするん?』
「章ちゃんしか入って来ないもん」
『はぁ...』

わざと大きな溜息をついてみせても#name1#は動じない。少しは女の自覚を持てばいいのにと、たまに思う。そしてたまに、物凄く心配にもなる。

今日ここに来た理由を思い出し、貸して欲しいと頼まれていた映画のDVDを袋から 取り出して、#name1#に差し出した。

「やったー!ありがとう!見よ見よ!」
『俺もう見てもうたし』
「えー、一緒に見ようよ」
『何回も見んでええタイプのストーリーやねんもん...』

ぶつぶつ言ってみるけど、その間に#name1#が立ち上がって部屋の隅にある電気のスイッチを押した。テレビの画面だけが浮かび上がる部屋に、もう一度溜め息を漏らした。

『電気消しに行くのと鍵掛けに行くの、大して変わらんやん、』

呟くように言えば#name1#は呑気に笑っていた。

真っ暗の部屋では雑誌を読むことすら出来なくて、仕方なく画面に映る恋愛映画を眺める。ストーリーを知ってしまっているから、ドキドキも何もない。ただぼーっと画面を見ていた。

映し出されたベッドシーンに#name1#が呟いた。

「この女優さん、すごいギャップ」
『わかる!』

俺も最初に見たときにそう思っていた。可愛いくて清純派の女優さんが、キスシーンやベッドシーンになるとかなり大胆に変化する。その女優魂がすごいと思っていた。
こういうちょっとしたところをいつも共感出来るから、#name1#が幼馴染みでよかったと思うことがある。

「男の人ってさ、こういうシーン見てムラムラしないの?」
『映画の雰囲気によるんちゃう?』
「ふーん。そっか」
『あー、でもキスの方がしたくなるかもしれん』
「あー、そうだね。それはわかるかも」

ちょっとした悪戯心が芽生えた。
俺が黙ったからか、#name1#が俺を見て首を傾げた。どうしたんだろう、と思っているであろう#name1#を見ながら、顔を近づけてキスをした。決して短くはないキスをして離れるまで、ずっと目を閉じずにいた#name1#に、笑いながら言った。

『普通目ぇ瞑ったりするやろ』
「だって急にするから」
『ええやん。一回ぐらい』
「うん、章ちゃんだしね」
『もう#name1#の知らんとこないんちゃう?俺』
「そうだね。大体知ってるね」
『あ、一個あるわ』
「なに?」
『セックス』
「それは知らなくていいよ」
『#name1#と、とか、想像出来ひんなぁ』
「想像されても困るし! 」
『#name1#でも勃つんかなぁ...』
「は?なに!!」
『...すんません、』

笑いながら謝ったら、#name1#も笑っていた。
冗談でしたキスは、俺達の仲を揺るがすどころか、繋がりを強めた気さえする。
だからやっぱり、こいつでよかったと思わずにはいられない。


End.

- 3 -

*前次#


ページ: