子供にする愛撫
章ちゃんから、
“ コンビニにいるから今から行く ”
とメールがあった。
慌てて束ねていた髪を下ろして首筋の痕を隠す。目は、少々腫れていても仕方ない。章ちゃんには何度も見られているから。
インターホンが鳴った。
ドアを開けた瞬間に笑顔だった章ちゃんの顔が少し曇ったように見えたから、わざと明るい声で、どうぞー。と言って部屋に上げた。
『今日仕事、渋やんと入れ違いやねん。だから来た』
「ありがとう。昨日、ごめんね」
『大丈夫やで。...メイク、珍しない?どっか行くん?』
「行かないよ。休みだってたまにはメイクするし」
『...そうかぁ』
最初と同じ笑顔に戻った章ちゃんは、買ってきた!と言ってケーキの箱を差し出した。
「わーありがとう。お皿持ってくね」
ケーキ皿を2枚用意し、ハーブティーを入れてテーブルに運ぶ。
「このハーブティーね、すっごいおいしくて章ちゃんに飲ませたかっ...、」
あ、まずい...。気付かれちゃった、かもしれない。
私の首の辺りで止まっている章ちゃんの視線に気付き、慌てて立ち上がる。
突然、腕を掴まれ章ちゃんが立ち上がった。無言で私の髪をかき分け、そこに辿り着いた。
『...昨日、やんな?』
「..............、」
私の首筋の痕に優しくなぞるように指を這わせながら、章ちゃんが呟いた。
『...気持ちは 、あんねや、』
本当に小さい声だった。
多分私には、聞こえなくてよかった声。
そのまままた座った章ちゃんは、ハーブティーに口を付けて、なんでもないみたいに『うまい』と言った。
章ちゃんはすばるのことで、私の話を聞いてくれたり多少踏み込みはするけれど、別れろとか、すばるのことを悪く言ったりは絶対にしないかった。
章ちゃんの隣りに座ると、章ちゃんがお皿にケーキを乗せてくれた。
「ありがとう。いただきまーす」
『召し上がれー』
「おいしい!これ好き!」
『やろ?#name1#絶対好きやと思った!』
優しい顔をして私を見た章ちゃんに、少しドキドキした。だから視線を逸らしてケーキを見ると、視界に突然章ちゃんが現れ、口元に舌を這わされた。
『ついてたで。子供みたいやなぁ』
章ちゃんが笑った。
けれどそれは子供にするようなものじゃなくて、章ちゃんの舌に愛撫されるみたいな、すごくいやらしいものに感じてしまった。
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