euphoria


優しさと想いと


『まだ、痛いんか...?』
「ううん、全然」
『...全然覚えてへんわけちゃうけど、曖昧で...ごめん』
「...うん」

私と一瞬だけ目を合わせたすばるは、私の頭を片手で引き寄せ、啄むようにキスをした。

その後、手を引かれてベッドへ行った。けれどベッドの上では手は離され、触れられることもなかった。今までのすばるを思うと、何だか不思議だった。
悲しい、というより、諦めに近い感情かもしれない。
気持ちが目まぐるしく変わっていって、私自身も何が本当かわからない。


翌日、すばるが帰ってから、着信音が部屋に響いた。

『もしもしー、俺ー』
「...章ちゃんっ!!」
『え、なに?なんで怒ってんの?』
「昨日...聞いたよ。怪我のこと」
『......怪我って!そんな言うたら大袈裟やて!ただの捻挫やしー』
「...だから、来なかったの、?」
『...や、...そうやないてー!何そんなに深刻になっとんねん!』
「...心配、した、」
『......ん、...ごめん、』

少しの沈黙の後、章ちゃんが電話の向こうで笑った。

「...なに!」
『なんもあらへん。そんな怒んなやぁ』
「もうしません、は?」
『なんやそれ!お前はオカンか』
「約束。...内緒は、ダメだよ?」
『...はい...もうしません...』

叱られた子どものような章ちゃんは、しゅんとしながらも、
『...今週、時間出来たら行くわ』
と言ってくれた。

いつかわからないのか、と思ってしまったのは内緒。そんな約束があるだけでやっぱり嬉しい。


すばるはと言うと、度々家に来ていた。セックスするわけでもなく、ただ少しだけ家に寄る、ということもあった。その間、すばる以外の匂いを感じることはなかった。
急に態度を変えたすばるに、私は嬉しいはずなのに、何だか複雑だった。


次の日章ちゃんが、少し時間が空いたから行く、とメールをくれた。すばるは打ち合わせに行ったから、大丈夫だと言った。

インターホンが鳴りドアを開けると、笑顔の章ちゃんがいて笑みが溢れた。少しだけ、足を引き摺っているようには見えたけれど。
章ちゃんを部屋に上げてお茶を入れ、隣りに座った。

「足、大丈夫?」
『ん、もうほとんど平気やで』
「...引き摺ってた」
『えー、また怒るん?やめろやぁ、せっかく来てんのにー』
「だって章ちゃん言わないんだもん」
『ごめんて。心配されたなかったんやけど、電話で心配された時、ちょっと嬉しなってもうた』
「......なにそれ、」

嬉しいなんて言うから恥ずかしくなって、紅い顔を隠すように横を向いた。



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