闇に紛れた言葉
章ちゃんが帰ってから寝室へ行くと、すばるはスースーと寝息を立てていた。
確かにすばるがこんなに酔っているのは見たことがなかった。
布団を捲ってすばるの隣りに身体を滑り込ませたけれど、すばるの寝顔を見ていると章ちゃんが言った言葉を思い出し、眠れなかった。
翌朝、すばるの携帯のアラームで目を覚ました。朝方にいつのまにか少し眠っていた。
すばるを揺り起こすけれど、顔をしかめるだけで一向に起きる気配がない。
「すばる、」
『...ん』
「...すばる、起きて」
『...、#name1#、?』
「アラーム、鳴ってるよ」
『...ん、え、...なんで、?』
すばるは昨日のことを覚えていないのか、状況を把握出来ていないようだった。
アラームを止めたすばるは『あたま痛っ...』と言いながら私を見た。
不思議な顔をしているから、とりあえず冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってきて大丈夫?と聞きながら渡すと、一点を見つめたままでゆっくりと頷いた。
『夜中に、章ちゃんが連れてきてくれたんだよ』
「...え、そうなん?何も憶えてへん...」
動かずに固まったままだったすばるは、やっと体制を変え、頭を押えて溜息をついた。
『...なんでヤス?俺、横と居ったよなぁ...』
「章ちゃん、すばるに呼ばれたって言ってたよ、」
ドキドキしながら返事をした。
動揺がバレないように、何でもないみたいに。
『...俺が、呼んだん、やんなぁ?』
「...そう言ってたけど、」
『何を言おうとしてん、俺...』
「..........。」
『...そうなんか。ヤス、どうした...?』
「どうしたって...?お茶、飲んで帰ったけど、」
『...そうなんや』
「............、」
どういう意味で聞いたんだろうか。
気になったけど、自分に疚しいことがある以上、もう聞くことが出来なかった。
『...シャワー借りるわ』
すばるがお風呂場の扉を閉めた瞬間に溜息が漏れた。自分でもびっくりするくらい緊張している。
さっきのどうした、は、一体どういう意味なんだろう。
私が疚しい事をしているから、引っ掛かってしまうだけなんだろうか。それとも...。
シャワーから出てきたすばるは、髪も乾かさずに『なんかすんません、』と、随分他人行儀な挨拶をして家を出て行った。
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