引き裂かれたココロ
最近は二人共忙しく、連絡が少ない。
何度も携帯を確認してしまう私は、誰からの連絡を待っているんだろうか。
仕事の帰りにコンビニに寄ると、並んでいる雑誌や週刊誌の見出しに、彼らの名前がたくさん並んでいた。
その中で、一冊の週刊誌が、章ちゃんの名前を大きく取り上げていた。
“ 若手女優Yと深夜の密会 ”
そんな見出しだった。
こんな記事は初めてではない。なのに、記事を見る余裕などなかった。入ったばかりのコンビニを、そのまま引き返して後にした。
章ちゃん、章ちゃん...。
コンビニから家までの道のり、心の中で何度も呼んでいた。
震える手を握り締める。
胸が、締め付けられるように苦しい。
思えば、私と章ちゃんはなんなんだろう。
恋人ではない。
身体を重ねたこともない。
キスはするけれど、好きだと言われたことなど、今まで一度もない。
ただの幼馴染みだった。
でも、もう“ ただの ”幼馴染みでもなくなってしまった。
じゃあ、私たちは...
なんでこんなに苦しいのだろう。
私はすばるが好きで、章ちゃんは...。
この想いに名前を付けてしまうのが怖い。けれど、私の中の章ちゃんに対する感情が変わりつつあるのは、確かだった。
その日の夜は眠れなかった。
どうしても章ちゃんのことが頭から離れなくて、目を閉じるのがひどく怖かった。
翌日、仕事の帰りに同僚に飲みに誘われた。気分は乗らなかったけれど、家に一人で居るよりはいいと思った。
すごくいいお店を見つけたと連れてこられたのは雰囲気の良いお店で、女同士で話していると、少し気が紛れた気がした。
昨夜寝ていないのも手伝って、酔いが回るのが早かったから、まだまだ帰りそうもない同僚たちより先に店を出る。
電車はまだある時間だけれど、酔っているしタクシーで帰ることに決めた。
大通りまで出て、タクシーを停めようとしたけれど、挙げかけた手が力をなくして下に垂れた。
少し向こうでタクシーを停めたその人は、紛れもなくすばるだった。
この前家にきた時と同じ上着。女の人の腰を抱いてタクシーを停めたすばるは、女性と一緒にタクシーに乗り込んだ。
もう、呆然としていた。
何も考えられないし、考えたくもなかった。
家に帰ってすぐにシャワーを浴びた。
全部、流れて行けばいいと思った。
すばるへの思いも、章ちゃんへの曖昧な感情も、ぐちゃぐちゃした気持ちも、全部。
涙は出なかった。
当たり前だ。
“ 二兎追うものは一兎をも得ず ”ということ。
すばると付き合いながら、全てすばるのせいにして章ちゃんへと逃げた、私への罰だ。
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