ほんまに嫌やねん
『勘違いせんといて。俺はさ、渋やんに隠すことがきついんやないで?』
俯く私を気にしているのか、チラチラと様子を伺う。
『#name1#のせいちゃうから、そんな顔せんといて。俺が最初にしたことやんか』
もう、駄目なんだと思った。
章ちゃんは、こんな関係を望んではいない。後悔している。
だって、章ちゃんの方が辛いはずだ。章ちゃんにとってずっと大切にしてきたすばるを騙すような事をしているのだから。
『...もう着いてまうな。家、上がっていい?ちゃんと話、しようや』
怖くて、手が震えた。
だけど気付かれたくなくて、自分で手を握り締めた。
『お邪魔しまーす』
いつもと同じセリフ。だけど、今日は違って聞こえる。段々と鼓動が早くなる。
『あ、お茶とかいらんで。こっち来て』
章ちゃんから少し離れて隣りに座った。胸が苦しくて、上手く呼吸が出来ない。章ちゃんが優しい顔をしているから、余計に痛かった。
『まずな?#name1#は、何があったん?なんで携帯切ってた?』
幼い子供に話すみたいな、すごく優しい声だった。
「......すばるが、女の人と一緒のとこ、見ちゃったの。それと、...」
『...ん』
ダメだ。
今の状況で、章ちゃんに想いを伝えるわけにはいかない。章ちゃんは終わりにするためにここに居るはずだから。
伝えてはいけないと思った。
『...それと?』
「..............。」
章ちゃんがずっと私を真っ直ぐに見ているから、緊張した。
お願い。気付かないで。
「...ちょっと、体調が悪くて...」
『...そうか、辛かったんやな』
章ちゃんは私の頭をくしゃくしゃと撫でた。そして目が合うと章ちゃんは、眉を下げて笑う。
『#name1#。俺な、#name1#がめっちゃ大事やねん。だからな、#name1#が幸せやないと、ほんまに嫌やねん』
うん、わかってる。
章ちゃんの表情から、伝わる。
大事に思ってくれているのが痛い程わかる。
知ってるよ章ちゃん。
章ちゃんは、絶対別れろなんて言わないの。
『...渋やんと、ちゃんと話さんとあかん』
「...ん、」
『話はいつでも聞くで。でも、もう共犯はおしまい』
「......ん、」
『最初はな、少しでも支えられればって思ててんけど、やり方、あかんかったよな。ほんま、俺が悪かったわ。ごめんな』
なんか、さよならみたいな言い方。
でも、それもわかってる。
章ちゃんはもう家には来ない。私が呼ばない限り、来ることはないはず。
それが“ 私のため ”だから。
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