“ただの”幼馴染み
すばると別れてから、丸一日遅れで章ちゃんにメールをした。
“ 章ちゃん、会いたいよ ”
ずっと考えていたけれど、分からなかった。
すばるの想いを感じたと同時に、すばるの弱さも知ってしまった気がしてどうしたらいいか分からなくて、すばるとは終わったはずなのに、やり切れない気持ちでいっぱいになってしまった。
すばるとやり直したいわけではない。けれど、気になってしまってしょうがない。
こんな気持ちのまま章ちゃんと付き合うわけにはいかない。
私から暫く会わないと言ったのに急に会いたいと言ったことも、すばると会ったのに報告をしなかったことも、章ちゃんはきっと変に思っているはずだ。
そして、気持ちが揺らいでしまったことにも、きっと気付いている。
夜中にインターホンが鳴った。
わかってる。章ちゃんしかいない。
ドアを開けると、ニコニコした章ちゃんが立っていた。
『今日の朝言うたばっかで早ない?俺も会いたかったけど!』
明るく振る舞ってくれているのはわかった。
章ちゃんは私の手を取り、手を繋いでリビングへ向かった。私をソファーに座らせると隣りに座り、私の顔を覗き込む。
優しい顔をして笑う章ちゃんを見て、自分の弱さに心が痛んだ。
『ほんまわかりやすいわぁ...』
苦笑いしながら言った章ちゃんは、ソファーに深く座り直し、言葉を続けた。
『わかってる。最初から、時間掛かるかも言うてたやん。俺は大丈夫やし。...待てるで』
「.......ごめんね、」
『謝ることちゃうやん。#name1#は自分の気持ちに正直なったらええねん』
「...ありがとう、」
章ちゃんは、何も聞かなかった。
私の不安も戸惑いも躊躇いも、きっと全て見透かしながら、黙っていた。
『今は、ただの“ 幼馴染み ”な 』
家に来てからずっと繋がれていた手が握り直され、ぎゅっと力が込められた。章ちゃんの温もりを感じて、少し安心させられる。
いつもそうだった。何かある度に子供の頃からいつも手を繋いで、何も言わず、ただ傍に居てくれた。
朝の約束通り、暫く会わないことを決めた。今日章ちゃんを呼び出したのも、私の我儘だったのだから。
あと、もう少し。
私の中のすばるが消えて、笑えるようになるまで。
- 31 -
*前次#
ページ: