出会った頃のよう
あれから1ヶ月が経った。
章ちゃんとは一度も連絡を取っていなかった。
テレビで見る章ちゃんは、少し前の髪型だからリアルタイムではないけれど、いつもと変わらない笑顔で、安心させられた。
それはすばるも同じで。
2人があの日どんな会話を交わしたのかは知らないけれど、ちょっかいを出して笑い合う二人は、きっと途轍もなく強い絆で結ばれていて、それは今回のことがあったからといって揺らぐことはないのだと感じ始めていた。
私は、時間が経てば経つほど章ちゃんに会いたくなって、ずっと想っていた。何をしていても、ずっと。
残業で遅くなった仕事帰り、前にすばるを見掛けたあの通りを歩いていたら、すばるのことを思い出して、少し笑った。
苦いけれど、笑えるくらいになったのだと自分で感心する。
『#name1#?』
突然後ろで呼ばれて振り返ると、驚いたように目を丸くして私を見つめる瞳があった。
「...すばる、」
すばるのことを考えていたから、少し動揺して鼓動が早くなる。
『やっぱり!こんな時間に珍しいなぁ』
すばるは、一番最初に出会ったときのような屈託のない笑顔で私に話し掛けた。別れた時みたいな雰囲気は微塵も感じさせずに。
一緒にいた横山くんが、私に会釈してすばるに、小声で聞いた。
『...誰?』
『ヤスの幼馴染みや』
『あー、聞いた事あるなぁ』
「はじめまして」
『いつもお世話してやってますー』
笑っているとすばるが横山くんに突っ込む。
すばるは私を、自分の知り合いではなく、章ちゃんの幼馴染みだと紹介した。
すばるは思い出したように、あ。と声を出し、横山くんに先に帰るように促した。手を上げ横山くんに挨拶すると、すばるが私を見た。
『ちょっとだけ時間もらえへん?』
意外な誘いに驚いて思わず口を噤んだ。
『や、ちょっとやから。そんな怪しまんといて』
すばるが笑った。
『なんや、緊張しとるんか!』
「...そうじゃないけど、」
店に入り個室に案内されると、すばるが私を見て笑う。すばるは、よく笑うようになった。最初の私達は、きっとこうだった。
『何もせぇへんから、一杯付きおうてや』
「うん」
ずっと笑顔のすばるの雰囲気は、付き合い始めた頃と似ていた。私に気を遣っているのか、チラチラと私を見るから苦笑いする。
『用件はな、コレやねん』
テーブルの上に音を立てて置かれたのは、私の家の鍵だった。
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