euphoria


待ってた、なんて


翌朝、すばるは朝ご飯も食べずに家を出て行った。

最近彼らはすごく忙しそうだ。
会わないことに少しだけほっとしたり、一人の時間がすごく寂しく感じたり、私は我儘だ。

あれから、すばるとは一度しか会っていない。
家に来てすぐに押し倒されて、一度だけ抱かれ、そのまま泊まりもせずにすばるは帰って行った。すばるの体からはまた、女の匂いがしていた。

章ちゃんからの連絡は、大阪の電話以来一度もない。私から連絡することは、こういう関係になってからはほとんどない。なんとなく、寄りかかり過ぎてしまうのが怖いから。


仕事の帰りに近所のコンビニに立ち寄った。雑誌なんかを一通り眺めて顔を上げると、窓に映る隣の人に目が行った。

「あ、」
『あ、#name1#』
「なんか、久し振りだね」
『せやなぁ。今行こう思うててん。まだ帰ってないやろな、思て待ってた』
「そっか、ごめんね」
『全然ええよ。お疲れさん』

章ちゃんとコンビニを出て並んで歩く。横から手が伸びてきて、私の手にあったコンビニの袋を章ちゃんが何も言わずに持っていった。相変わらず優しい。

『俺んこと、待ってた?』

突然聞くから、変な間を作ってしまったことに慌てて、笑って誤魔化した。

『また電話する言うてしてなかったし、気になっててんけどなー』
「じゃあ、...」

“ 来てくれればよかったのに ”
という言葉は飲み込んだ。言ってはいけない言葉のような気がしたから。

足元を見て歩いていた章ちゃんが私を見たのがわかったから、空を見上げて気付かない振りをした。

「じゃあ、メールでもすればよかったー」

笑いながら言った言葉には、何も返って来なくて、また下を向いた章ちゃんは石を蹴り飛ばした。


玄関の鍵を開けようと鍵を取り出すと、章ちゃんが『あ、』というから振り向いた。

『それ、』
「あ、うん。章ちゃんが選んでくれたんでしょ?ありがとね」
『ん。』
「覚えててくれたんだねー。嬉しかった!」
『いや、当たり前やろ。ずっと一緒に居んのに』
「あは、そうだね」
『変な気分やったわ。渋やんと一緒に#name1#のもの選ぶて』
「...そうだよね、」

章ちゃんから受け取ったコンビニの袋をキッチンに置くと、突然後ろから抱き締められた。

「...章ちゃん?」
『ん』
「どうしたの?、急に」
『別に?久々やから』
「 ...うん」

抱き締めながら私の首筋に顔を埋めるから、ゾクリと肌が粟立った。

ぱっと腕が解かれ離れた章ちゃんは、ソファーに座りさっきコンビニで買ったファッション雑誌を見ていた。
コンビニで買った簡単な夕食を温めていると、章ちゃんが私を呼んだ。



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