euphoria


私と貴方の関係


『#name1#、俺な、この前渋やんに#name1#に会うてんのか言われて、会ってない言うてもうた』

笑って言う章ちゃんを見つめたけれど、目は合わなかった。雑誌に目を落としたままの章ちゃんは続けて言った。

『だからそういう事にしといてな』
「...うん」

私は章ちゃんにとんでもない事をさせているんじゃないかと、今更気付かされた。
章ちゃんは、どういう気持ちで私にキスをするのかわからないけれど、すばるに嘘を吐くことが、章ちゃんの心を重たくしているのに間違いはないと思う。だって、章ちゃんはそういう人だ。

けれど、もうやめていいよ、と言ってあげられない私はずるい。
だって、章ちゃんが離れて行くのは、やっぱり嫌だ。
これは恋なのか、執着なのか。私にもわからない。ただ、章ちゃんが必要だった。

章ちゃんがなんでもないという顔をしているのは、明らかに私のためで、私が考え過ぎてしまわないように振る舞ってくれているんだろう。


突然携帯のメールの受信音が鳴ったからビクッと体が跳ねた。
慌てて携帯を開く。

“ 今から行く ”

ドクンドクンと大きく鼓動が響いた。

『...渋やん?』
「...うん。ごめん...」
『ええよ。俺はあくまで“共犯”やから』

笑いながらバッグを持ち、玄関に歩く章ちゃんの手を、思わず掴んでしまった。

『...なに、?』
「.........。」

優しい顔をした章ちゃんが首を傾げる。
私は一体、何を言おうとしたのだろう。
言葉が出てこなかった。
ただ、申し訳ない気持ちだったのか、それとも...。

『そんな顔すんなやぁ。俺は大丈夫やし。また来るて』

私を抱き締めて、子供をあやすように頭をぽんぽんと撫でた。

『ほら、はよせな。渋やん来てまうで?』

最後にぎゅっと抱き締めて離れると、また優しい笑顔を向けた。
そして今日も、振り返ることなく、ドアが閉められた。

なんだか、やり切れない気持ちになってしまった。これからすばるが来るというのに、こんな風で大丈夫だろうか。どうして私はこうなんだろう。

部屋を見回して、章ちゃんの痕跡が残っていないか確かめた。
私の部屋に章ちゃんのものが増えることはない。それが今は寂しく感じた。

私は最低なことをしているというのに。



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