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……………
所変わって、こちらは先に室内へ戻った男。
彼はまだ頭を抑えながらフラフラと歩き、自室隣のサラの部屋へと向かっていた。
コンコン
「はい」
「サラー」
ナイジェルの声だ。
暇潰しにビッキーから貰ったファッション雑誌を読んでいた彼女は、腰を上げて扉の方へ向かった。
「どうしたの?」
「すみません。ちょっとコーヒーを淹れてもらえませんか?」
「…?」
彼女もまた頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
今、この人が言った?
「どうしましたか?」
「いえ。あのさ、どっかで頭でも打った?」
「?はい。打ちはしましたけど」
「そ…そう」
顔を少々引きつらせた彼女だが、いつも通り部屋に入れてあげた。
ビッキーの可愛らしい部屋とは違い、やや女性らしさに欠ける物が少ない部屋。
あとは雰囲気を壊す、キッチンに並べられた空の缶ビールが目に付く。
「コーヒーね、ちょっと待ってて」
「すみません。お願いします」
ナイジェルは椅子に座り、おもむろに先程サラが読んでいた雑誌を読み始めた。
電気ケトルのお湯を注ぎながら、その姿を見て更に違和感を覚える。
(ナイジェル。いつもそんな若者向けの雑誌なんて読まないわよね?頭打ったって言ってたし…大丈夫かしら)
コーヒーの香りが部屋に漂う中、ふと彼に問いただしてみる。
「ねぇ…大丈夫?病院行こうか?」
「病院?そこまで行かなくてもいいですよ。軽く打っただけですから」
「軽く打ってそんなに重症なの?あ、いや…大丈夫ならいいんだけど」
それでもやはり怪しい。
どうぞと、テーブルに出来上がったコーヒーを出した。
「ありがとうございます」
初めて見るナイジェルのキラキラした笑みに、ますます違和感を感じる彼女。
というか…ちょっと気持ち悪い(笑)
サラが不意に笑いを堪えようとしたその時。
「ねぇ…サラ?」
「何?」
「液体って…鏡みたいに自分の顔も映りますよね?」
「何言ってるのよ、当たり前じゃない」
「他の人間の顔なんて…映りませんよね?」
「映るわけないでしょ?全く今日はどうしちゃったの、ナイジェル」
「ナイジェ…」
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