「あっ!何してんですか!孝太郎っ!ジョセフィーヌ!あと……あともう1匹!」

「結局テメーも名前覚えきれてねぇじゃねぇか!
大体ウチの事務所は動物飼うの禁止って毎度ジムに言われてんだろ!?
どうしてこういつもどこから拾ってくんだ!」

珍しくプチンときたリッキーは、寝転がっているナイジェルの胸ぐらを掴んだ。

そのまま上半身を起こさせる。


「可哀相な猫を拾ってきて何が悪いんですか!」

「だから飼うのであれば実家で飼え!ウチはダメだ!」

「ケンカ売ってるんですか!?上等ですよ!30円で買ってあげますから!」

「俺が今声を上げている労力を30円の価値しかねぇって言うのか、テメ!怒」




「〜♪…ん?」

そこへ偶然、鼻歌を歌いながら携帯をいじって通りかかったのは今日も派手な服に身を包んでいるビッキーだ。

彼女の目に映ったのは、ナイジェルがリッキーの胸ぐらを掴み怒鳴っている光景。

(リッキーも胸ぐらを掴んで極悪顔で怒鳴っているのだが、それは彼女の脳内で自動的に補正されている)


その姿を見て黙り込み、何を思ったか全力でナイジェルに向かって走り出した。

次の瞬間―



バコォ―ン!!



彼女は持っていた小型バッグでナイジェルの後頭部を強打。

白眼になって倒れる彼に向かって半泣き状態で叫んだ。


「私の彼氏に暴力を奮わないでぇ!」


あっ…。

気づくと倒れてるナイジェルの下敷きになって、愛しの彼氏(彼女の妄想では)がぺしゃんこに潰れていた。


「あ、リッキー!しっかりして!」

慌てて邪魔な上の体を退かしてしゃがみ込む。

しかし何度か呼びかけられてムクリと起き上がったのは、何故か目当てのリッキーではなく中年おじさんの方。

「ハハッ。大丈夫ですよ。ちょっと俺、部屋に戻って休みますね…」

「…はい?」

不気味だとさえ思える、あのナイジェルの笑顔。

フラッと立ち上がり、おぼついた足取りで彼は部屋の中へと戻って行く。

きょとんとしたビッキーはその姿を目で追いながら固まってしまった。


「私、ヤバい所殴っちゃったかな?」


いや、そんな事はどうでも良いとして…

早く愛しのダーリン(彼女の妄想の中では)を助けなきゃ!

ビッキーは慌てて倒れたままのリッキーの体を抱き起こした。


「リッキー!しっかりして!」

「うぅっ…」

ゆっくりと目を開け、緑色の綺麗な瞳が現れる。

彼は目を半開きにしたまま、じっと彼女の顔を見つめた。

「えっ…///」

顔の距離は近い。

お互い見つめ合っていると気がついた瞬間、ビッキーの顔はみるみるうちに赤くなる。

なんかこのリッキー…いつもと視線が違う!

エロチックというか、ワイルドというか…

狼のようで凄くドキドキする!

ヤバい!この熱い視線で私、とろけちゃいそ…


「何しやがんだ。この野郎…」

「……?」


あの爽やかなリッキーの口から出てきたその言葉。

咄嗟の出来事に彼女の頭上に「!」が浮かび、目からは黒い瞳が消えていた。

リッキーはそんな彼女に目もくれず腰を抑えながら立ち上がる。

そして頭を抱え、不機嫌そうな顔をして建物の方へと歩き出した。

「イッテェ。んだよ、どいつもこいつも…」



…何で?

ひとりポツンと庭に取り残されるビッキー。

オッサンのようなリッキーの曲がった背中を見て、黙って立ち尽くす事しか出来なかった。


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