……………

金曜日当日。

ジムの強引な命令により映画出演が決定し、一同は揃って局へ足を運んでいた。

くだらない話をしながら案内された控え室で待っていると、そこへサングラスを首からかけた中年男性が扉を開けて入ってきた。

この人がハリー監督だ。

全員は会話を中断し、咄嗟に立ち上がった。


「ようこそいらっしゃいました!この度、映画『ラブロマンス』の監督をやらせて頂きます、ハリー・ウッドです。よろしくお願いします」


(タイトルまんまかよ)

(まるで映画を作る為に生まれてきたような名前だな)


心の中でちらほら言葉が飛び交った。

しかし有名監督と言われているため厳しい人物を想像していたが、どうやら気さくで優しい性格のようだ。

その辺ではとりあえず救われた気分になる。

6人が脳内で考えている事など知らず、ハリー監督は嬉しそうに話を始めた。

「いやー、それにしても本当に貴方達に出演して頂けるなんて光栄です!
今の貴方達の人気はスポーツファンだけに留まりませんからね。話題性もありますしきっと注目されるはずです!
やるからには一緒に頑張って、良い映画を作っていきましょう!」

「「はい」」


本当に我々のファンだったらしいハリー監督のやる気は満々。

すると彼は持っていた紙袋から台本を6冊取り出し、それを全員に配り始める。


「えっと、じゃぁ簡単にどういう映画か教えるね!舞台はロマネストキャンパスという、架空の大学!
そこで出会った男女が大きな壁を乗り越えながら惹かれ合う純愛物語だよ!それは台本!あと役の方はこっちで決めさせてもら…」


「はいはい!はぁーいッ!私、ヒロインやりたいです!」

そこで大きく手を上げたのはもちろんビッキーだ。

すると監督の表情が、パァッという効果音と共に明るくなる。

「あ!君、ビッキー・スティールちゃんだよね?僕、ファンなんだ。後でサイン頂戴」

「もちろん!じゃぁ私をヒロインにしてく…」


「「…………。」」

ふたりに冷たい視線を浴びせる5人。


「あ…あはは(笑)そんな怖い目しないでよー。大丈夫!役者はそのキャラに合った人物をこちらから公平に予め決めさせてもらってるから。あ、ヒロインはそこのお姉さんね」


慌て顔のハリー監督にヒロインとして指名されたのは、ビッキーではなく一番やる気のなさそうなサラだった。


「…私?」

人差し指を自分の顔に向け、目をパチクリさせる彼女。

「そうだよ」

「無理無理無理ですって!悪の…地球侵略を目論む悪の大女帝でいいですから!」

「いや。舞台大学だから」


もちろん自信なんてあるはずなく、すぐに役を降りようとする。

自分が演技なんて…しかもメインのヒロインだなんて、とてもじゃないが出来る気がしない。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。それにこの役は君にしか出来ないんだ」

「私にしか出来ない?どうしてですか?」

「この物語のヒロイン『サリー』はクールで無口。人付き合いが悪くて周りからは怖がられる孤独な女性だ。
ビッキーちゃんがそんな役をやっても似合うはずないでしょ?イメージ的には君の方が断然似合ってるじゃないか」

「……。」


ハリー監督が彼女を選んだのにはきちんと理由があった。

が…嬉しくもない褒め言葉に眉をひそめる。

確かに怖がられる役はビッキーがするより私がした方がよっぽどリアリティがある気はするが…

隣でジムが「それ、まんまお前だよ」と笑っている。

ぶん殴ってやりたい。


そこでハリー監督はサラの事を一旦置いておき、他のメンバーの役も次々に指名し始めた。

「ちなみにビッキーちゃんはサリーの支え役兼親友でもある明るい性格のビクトリア。

ジムさんはクラスのまとめ役で先生からの信頼も厚い真面目な生徒、ジェームズ。

ボビーさんは大学教授、皆の担任とも言えるボブ先生。

そしてサリーの相手役…主人公は君だよ」


問題の主人公に指名されたのは…


「え?俺…ですか?」


指をさされたのは、ナイジェルではなくその隣に座っていたリッキーだった。


「うん。この物語の主人公『リチャード』はヒロインより3歳年下の爽やかな男の子!
途中からこの大学に入るんだけど、持ち前の爽やかさと人柄で男女共に大人気の男子生徒だからね!」


「え…?じゃぁ俺は?」

ナイジェルがそう訊くと監督は笑顔で言った。



「ボブ先生と同じ大学教師であり、サリーの元恋人のニック役です」



自然と目が見開いた。

思わずリッキーとナイジェルは無言で顔を見合わせる。



「あーあ…。なんか凄い組み合わせになっちゃったな」

最後にジムは聞こえないようにぼそりと呟いた。


- 149 -

*PREV  NEXT#


ページ: